寝楽起楽

ネタばれには配慮しない、感想/紹介ブログです。毎週1回更新 +α を目指したかった。

読んでなくても語りたい:『『罪と罰』を読まない』 岸本佐知子・吉田篤弘・三浦しをん・吉田浩美』 文藝春秋 2015年 

浩美 そうか、三人称の小説なんだ。なんとなく一人称なのかと思ってた。

篤弘 たしか、主人公はラスコなんとかーー。

岸本 ラスコーリニコフ

篤弘 その名前は、いきなり出てくるんですか?「彼は」ではなく、いきなりラスコール?

岸本 ラスコーリ……ニコフかな

三浦 主人公がラスコなんとかっていうのは知ってた(ドヤ)。

(本著p18)

 

               _人人人人_
               > ドヤ <
                 ̄Y^Y^Y ̄

 

 

 

○内容

 飲み会で『罪と罰』読んだことなくね?ってなった4人が、そのノリで読まないまま読書会したら面白いんじゃね?って言い出し実現した企画。小出しに明らかになっていく情報から内容をあれこれ勝手に妄想する

 

○感想

 特に三浦しをんさんの炸裂ぶりが笑えた。

 

 断片的に集まってくる真実から内容を考えるという作業自体は推理小説っぽくも読める。んだけど、それまで全く出てこなかった登場人物が新しくもらった情報で飛び出してきたりして、もしこれがミステリ小説なら完全に反則だろ、ということが多い。

 

でも推理してる当人たちはそれにめげず、どころかますますエンジンをかけて点と点を(勝手に)つなぎ合わせ、一枚の絵を作り上げていくその過程の面白さ。

 

弘美 ラスコをマークしている警察の人がいるのは確かだけど、なんていう名前だったかなあーー。

篤弘 追いまわすヤツがいることは間違いないんだ?

弘美 だって、それで物語を引っ張ってたから。

篤弘 でも、ラスコの故郷まで追ってくる?くるか、当然。

三浦 来るんじゃないですかね。とはいえ、第三部の始まりは、故郷で気力体力を取り戻しつつあるラスコですよ。お母さんと妹の愛に改めて触れて、都会に残してきたソーニャのことはちょっと忘れがちになる。そこへイリヤの影がーーというろところで第三部は終わりです。

篤弘 要するに「彼も人の子」パートですね。ここで読者の同情も買っておくのかな。

(p93)

 

 読んでて思い出したのは、オモコロで話題になった、『刃牙を全然ワカってない人に「最大トーナメント」を予想してもらった』てやつ。

 

 僕は『刃牙』も『罪と罰』も断片的にしか知らないまま読んでて、どっちかっていうとどんな話なのか一緒に考えるような読み方だったんだけど、多分内容知ってる状態で突っ込みながらのほうが遥かに面白いんだろうと思った。

 

 後本書には、ちゃんと4人が全部『罪と罰』を読んだ後での座談会も収録されてて、このパートが最高。

 

 4人とも読んでない時とは違って、「ドゥーニャがスベをピストルで撃って、弾が頬をかすめるシーン良いよね!」とかあらすじレベルじゃない、めちゃめちゃ具体的な話をしてて、読む醍醐味ってやっぱ個々の具体的なところに降りていけるところにあるなあと。

4人ともプロだし、読み込みが半端じゃない熱量なのも凄い。『罪と罰』が最良のエンタメみたいに思えてくる。

 

 

 自分の中で『罪と罰』を『カラマーゾフの兄弟』と完全に混同してたことを発見。

『兄弟』は通読したんだけど、「何か人殺す話」としてしか記憶になくて、『罪と罰』も「何か人殺す話」ということだけは分かってて、既読の本と未読の本なのに情報量が全く一緒というね。そりゃ勘違いするわ。

 

 じゃあ『兄弟』読んだ意味ないじゃんと思われる向きもあろうが、そんな人には三浦さんのこのあとがきを持って反論とさせていただく。

 

 もしかしたら、「読む」は「読まない」うちから、すでにはじまっているのかもしれない。世の中には、私がまだ手に取ったことのない小説が無数にあります。そして、まだ語られず、私達のもとに届けられていない物語も、これから無数に生まれてくるでしょう。それらはいったい、どんな小説、どんな物語なのか、愛と期待を胸に思いめぐらせるとき、私たちはもう「読む」をはじめているのです。

(…)名作を読んでいないからといって、あるいは、読んだけれど大半を忘れてしまったからといって、恥じたりがっかりしたりすることはないのではないかと思います。読んでいなくても「読む」ははじまっているし、読み終えても「読む」はつづいているからです。そういう「読む」が高じて、気になって気になってどうしようもなくなったときに、満をじしてページを開けばいいのではないでしょうか。本は、待ってくれます。だから私は本が好きなのだと、改めて感じました。

(p290)

 

 良いこというわー。

 

 本著を読んで、ラスコーリニコフ、アリョーナ・イワーノヴナ、ラズミーヒンは忘れるかもしれんけど、「いきなり帰るマン」、「因業ばばあ」、「馬」は多分忘れんし、あと上の言葉もよーく覚えておこうと思いました。まあ、忘れてもまた読めばいいし。

 

 『カラマーゾフの兄弟』で続編出してくれ。

 

以上。

プロフェッショナル・俳句の流儀:『他流試合ーー俳句入門真剣勝負!』(講談社+α文庫)

兜太 でね、そのことを別の角度から言うと、今日あるような俳句の一句一句、これはもともと正岡子規が、歌仙形式ーー後から虚子が連句って言ってますけど、連句の発句を独立させたんですね。それを俳句と呼んだんですけど。連句の発句というのは言うまでもなく、その後に七・七の付けを予定しているわけですよ。

せいこう 必ず付句がある。

兜太 だから当然、そのニュアンスは今でも残っているわけですよ。残影なんていうものではなくて、基礎的なものとして残っていると思います。俳句を作るときに、だれかに呼び掛けて作っているとか、次の付けを想定して作っている。これを私は「挨拶」と言っているんですが、挨拶の心構えで作るというのは大事なことだと思うんです。そうするといい句ができると、迷信みたいに思っていますけどね。とにかく俳句はそもそも挨拶を前提として作られていたんだと、これが大事でしょう。

せいこう ああ、素晴らしい。僕が素晴らしいなんていう権利もなにもないですけど、それはすごいですね。

 (p121-122)

 この辺とかなるほどの嵐。

 

 

 

〇内容

 伊藤園の「お~いお茶新俳句大賞」の選者仲間である俳句の大家金子兜太さんと、いとうせいこうさんが俳句について一生懸命話す。

 

〇感想

 『俳句入門』と銘打ってはいるものの、あくまで金子さんといとうさんの俳句観なので、全体として王道なのかどうかはわからん。

 

なので金子兜太さんについて知りてえ、あるいは知らなくてもすげえ人の話をとにかく聞きてえ、という人にはまず間違いなくお勧め。一般的な俳句論を知りたい、だとちょい微妙。

 

 

 せいこうさんがちゃんと素人の立場に立ってくれててありがたかった。

 

俳句賞の選者を長年務めてるんだから俳句のことを知らないわけはないんだけど、それでも「俳句ってなんだ?」て根本の疑問をずっと持ち得ることが出来てる人なんだと思う。

反して金子さんは自分流で「これはこうだ」という観念がしっかりとある人で、「他流試合」てタイトルだけど実質師匠と弟子の会話見てるみたいな感じ。

教える、教えられるの関係性がわりかしはっきりしてるから、自分みたいな一句も覚えてないど素人でも安心してついてける。

 

 

 そうやってなるほどね~っつって読んでって最後の章、文庫化するにあたって改めて十五年ぶりに対談してるあれはぶっ飛びますね。

完全に兜太さんが達人の境地に達してしまっていて、しめくくりにふさわしいラスボスの風格を漂わせてた。最初から読んでるからこそ覚える、「あそこから変身するんすか」感。

 

 

 俵万智さんの口語短歌の影響は俳句にもあるとか色々面白い部分は多々あったけど、やっぱし本文冒頭にあげた「俳句=挨拶」っていうのはすごいと思った。

 

ある意味では完成させる必要はないんだね。だから五七五の定型に落とし込んでいく術さえ身に着けてしまえば、あとはめちゃめちゃ自由な遊びになると。

 

 ただ兜太さんの俳句、例えば

谷に鯉もみ合う夜の歓喜かな

涙なし蝶かんかんと触れ合いて

なめくじり寂光を負い鶏のそば

 

  こんなんがあるが、これに七七つけろと言われてもそれはムリゲーだよなあ。

 

 あと金子さんは今年の二月に亡くなられてるんだけど、

 

水脈(みお)の果て炎天の墓碑を置きて去る

銃眼に母のごとくに海覗く

湾曲し火傷し爆心地のマラソン

 

 ↑こういう戦争をもとにした俳句も多い。

晩年は平和活動家としても有名で、それ自体にはいろいろ賛否あったようだ。

ただこういう、兵士としての実体験を基に詩を書ける人は金子さんが最後だったと今月号の『俳句』に載っていた。

こういう人が居なくなってしまったのは、大きな損失だという気がしている。

 

 

俳句 2018年5月号

俳句 2018年5月号

 

 

『俳句』の金子兜太特集もぜひ一緒に。

 

以上。

 

 

 

人の手帳を読んできた。

 すれちがう人になんとはなしに顔を向けながら、「思考が読み取れたりしねえかな」とか思ったこと、ありませんか?

 

 私はあります。相手がものすごい奇抜なファッションだったり、一生交わりそうもないようなタイプだったらなおさら。

これから先全く縁のない人の頭の中であるならば、覗いても良心が痛むこともないし。

 

 まあ突然そんな特殊能力に目覚めるわけはなし、リアルタイムで……とはいきませんでしたが、その夢が部分的に叶えられるサービスを見つけたので、今回はそれを紹介します。

 

 それがこの、参宮橋にある「手帳類図書室」。

 

 使用済み手帳を収集することにはまった志良堂正史さんが、そのコレクションの一部を一般に開放しているというもので、年代・性別・職業様々な、150人ちょっとの生活の記録を1時間500円で読めちゃうという、後ろ暗めな欲望を充足させるのには最適でした。

 

 具体的な内容は伏せますけど、ものによっては〇〇の〇〇部で〇〇付近に住んでて今〇〇歳だな、みたいなとこまでパラパラ見てるだけで情報抜きとれちゃうものとかもあって、中々ぞっとしましたね。

 内装も結構入るのに勇気がいる感じで、しかも入ったらレジカウンターの中に案内されるので、アブナイことが起こっても逃げられないような場所でアブナイものを読んでいる気持ちになりました。もちろんなんもありませんでしたが。

 

 割とみんなある程度まとまった文章を書いていて、そういう意味ではブログを読んでるのとあんま変わらん、という気もするんですが、ブログは自分の出したい側面しか出さない一方で、手帳は何もかもを暴露しているので、こんなこともあんなこともしてるんだー、へぇ、という楽しみ方もあります。

実際自分もブログに何もかも書いてるかといったらそりゃ書いてないしね。

あと詩人さんの手帳はすごかった。あれはもうそれで一つの作品になってた。

 

 個人的に一笑ったのは、新社会人の人、女子高生、メディア関係の仕事してる人、の3人立て続けに読んだら、3人とも世界遺産検定を受けに行ってたことですね。

流行ってるの?自分は「世界遺産と雑学の旅」というポッドキャストでこの検定の存在を知ったんですが、もしかしてその影響?この三人、会場でニアピンしてたりして。

自分も受けようか迷ってたんですが、これは何かに受けろと背中を押されてるんですかねえ。

 

 金曜、土曜しかやってませんが、読みにいくと結構面白いですよ。

また100円~500円で手帳の買い取りも行ってるそうなので、ある程度の覚悟がある人は売り払ってみてもいいかもしれません。

 

以上。

20代男子がセンスマウンティングしたくて作ったプレイリスト

 要は好きな曲詰め合わせです。全21曲。

公式PVが上がってない場合はitune musicから引っ張りました。

また際限なくなるので1アーティストにつき1曲にしてます。

 

〇「深夜高速」 フラワーカンパニーズ

//www.youtube.com

 

 自分が音楽に興味をもったきっかけ。どん底に陥っていたボーカルの鈴木圭介が書いた曲。ちょっと痛すぎないか、などとメンバーには言われたが、その身を切り心を切るような歌詞に多くの人が共感を覚え、結果的に代表曲にまでなった。

 

「吐きたくなるほど愛されたい」「ビューティフルドリーマー」「青い春」「初恋」「はじまりのシーン」などなどほかのフラカン曲にはまったりもするけど、なんだかんだここに落ち着く。

 

 

〇「今日も雨」 倉橋ヨエコ

 ネガティブ+ポジティブ=ポガティブ曲の筆頭。

 ヨエコさんの調子としては珍しく恋愛要素のない応援歌になっているが、安易に人を慰めた歌ではないところが良い。ピアノが時々雨粒が落ちる音みたいに入ってくるのも好き。

 

 2008年に引退された以降音沙汰はまったく無かったが、最近ファンの間で「もしかしてこれヨエコさんじゃない?」という曲が発見され、話題になっている。本当だとしたらお元気にされてたということで、マジ嬉しい。

 

 

〇「水星」 DAOKO

www.youtube.com 

  PVがお洒落。これは完全に個人的な感覚なんだけど、電光掲示板に歌詞が流れていくとこに未来感を感じる。tofubeat版も好き、というかこれが元ネタだと思ってたんだけど、大本は今田浩司さんらしい。びっくり。

 

 

〇「ベッドルームの夢」 ラブリーサマーちゃん

www.youtube.com

 

 「ベーえっドールぅーむぅーで 君がくぅーちーずさーむ めぇーろでぃい あーのーこにーも きーこーえたらいぃーいぃーねぇーえー」のとこの「いぃーいぃーねぇーえー」の「聞こえてなくてもいいんだけど、聞こえてたらちょっと嬉しい」感が好き。

  

 

〇「さよならいちごちゃん」 Serani Poji

  PS2ソフト「ニュールーマニア ポロリ青春」に登場するゲーム内ユニットSerani Pohjiの楽曲。作詞作曲は子供の教育向けだと爆発的に話題になった「はみがきのうた」などを作ってる「東京ハイジ」の中の人、ササキトモコさん。アイマスから知った人も多いのかな?

 

 セラニの曲はこれが凄く良い!というはまり方ではなく、全体に流れてる電子的アニメポップ具合が好き。こちらも最近復活の兆しあり。嬉しい。

 

 

〇「悲しくてやりきれない」 ザ・フォーク・クルセイダーズ

 映画「この世界の片隅に」の劇中歌としてコトリンゴ がカバーしてたけど、自分はその前からちゃんとこの曲知ってたのがプチ自慢。

後半になるつれ詩的になるのが素敵である。やりきれないときにこの曲を聴いているとやりきれなさが増していくのを感じる。

 

 

〇「近未来」 奥田民生

 「とにかくうっかりのんびりしない様」とうたっている曲調が致命的にのんびりであるのが民生of民生曲という感じ(個人のイメージです)。この気の抜け方は唯一無二。

 

 

〇「かくれんぼ」 Whiteberry

  『ピカチュウのどきどきかくれんぼ』のオープニングテーマ。「夏祭り」よりこっちの方が好き。「幼い思い」の「遠さ」を強調することで一気に年齢層が広がるあたりがよい。

 

 

〇「ミルクと毛布」 特撮

 「特撮」のボーカル大槻ケンヂが書いた、前に紹介したこの小説風自伝でとても印象的に使われていた子守歌。遅まきながらケンヂの作詞センスにはまりはじめている。

 

余談だが私は牛乳が大好きで、一説によるとパパママ言うより先にグーナー(牛乳)と喋るようになったらしい。

 

 

〇「愛のうた」 ストロベリー・フラワー 

 ゲームキューブソフト『ピクミン1』の主題歌。健気の極致、あるいは社畜の極み。しかしそんな彼らも、エンディングでは主人公に頼らずに食物連鎖の階段を登っていけるだけ成長した、頼もしい姿を見せてくれるようになる。

 

〇「Hungry Spider」 槇原敬之

 捕食対象である蝶に恋をしてしまった蜘蛛の話。逮捕される前に出した楽曲のラスト。こういう物語性の強い曲ってあんまり見ないが、自分は好き。

 

〇「ホームにて」 中島みゆき

 「やさしいやさしい声の駅長が」のとこがほんとにやさしい声。昔、有吉さんがテレビで紹介してて知った曲。

 

 

〇「夏の匂い」 LUNKHEAD

 「夏の匂い」ってどんな匂いなんだろうと思いながらいつも聞いている。穏やかな進行なんだけど、早く「君」に会いたい待ち切れなさが伝わってくる名曲。

 

〇「あの夏の日々」 THE イナズマ戦隊

 超がつくほど暑苦しい曲を生み出すことに定評のあるTHEイナズマ戦隊だが、だんだんとその熱気が癖になってくる。

 

〇「ハズムリズム」 Puffy×東京スカパラダイスオーケストラ

www.youtube.com

 

  タイトル通りに弾んでいくリズム、歌詞のキャッチ―さがよい。

 

〇「アルニ村 ホーム」 光田康典

 PSソフト「クロノクロス」の中の楽曲。いつかアコギの勉強をしてこの曲を弾けるようになれたらいいなあと思っている。思っているだけ。

 

↓こっから洋楽

〇「Virtual insunity」 Jamieoquai

www.youtube.com

 

 PVの異空間感が好き。カップヌードルのCMで知った。歌詞の意味は調べる度に忘れる。

 

〇「Do you sleep?」 Lisa Loeb

www.youtube.com

 

 某実況動画で使われていて知った曲。この人の作る曲は耳に穏やかに心地よい。でもやっぱり歌詞の意味はいまいちわかってない。

 

〇「The lazy song」 Bruno Mars

www.youtube.com

 

 なんもする気起きないよねー、だるいよねー、という曲。だるいときに聞く。

PVが滑稽。

 

〇「Say it ain`t so」 weezer

www.youtube.com

 

 友達がブログで紹介しててはまった曲。アル中の父に捧げられた歌。(デンデン)、(デンデン)からの「セイイっエインソーウオウオー」の盛り上がりがかっこよい。

 

〇「Piano man」 Billy Joel

www.youtube.com

 

 「もっとうまくやれたはずなんだけど」、という一抹の後悔を抱える客が集まるピアノバーのピアニストを主題にした曲。ビリージョエルの実際の経験が元。めちゃあったかい曲。良い。

 

 

 こんなもんですかね。 もしかしたらこっそり追加したりするかもしれません。

 

以上。