寝楽起楽

ネタばれには配慮しない、感想/紹介ブログです。毎週1回更新 +α を目指したかった。

私と私たち

「私たちは」という主語には「特定の物事について暗に合意を取ることで、集団を形成する」機能と、「その集団に入らないものの排除」という2つの機能が含まれている、気がする。たとえば、「いま私たちは、私たちという言葉に含まれる2つの意味を確認した」…

『ほんまにオレはアホやろか』/水木しげる

『ゲゲゲの鬼太郎』を描く前までを中心にした水木しげるの自伝本。のべつくまなしに語られるエピソードの一つ一つがやたらと濃ゆい↓ 学校に馴染めず日がなベンケイガニを眺めて過ごし、入学してみた美術学院は退屈で自分から辞め、誰でも入れるといわれた園…

私が「歴史」というものについてどう向き合うか、のド深夜覚書

「歴史そのものは好きだけど、読んでも読んでもかたっぱしから忘れる問題」について最近考えていた。「読んでる間おもしろいならそれでいいじゃん」という考え方もあるのだけれど(実際これまではそう処理してきたわけだけれど)、やっぱし読むからにはちゃ…

23年私的振り返り&24年に向けて

ちょっと前に年始のブログを書いた記憶なのだがいつの間にか12月になり、「じゃあ23年振り返りの記事を書くか~」と思っているうちに31日になった。 ただ、その間何も考えていなかったわけではなく、脳内ではずっと記事をこねくり回していたのだが、まとまら…

コロナかかった記

流行して早4年、感染経験がないために対岸の火事感もあったコロナだが、先々週についに感染した。 てことで、いまさら誰にも需要はないだろうが、どんな症状が出たか、メモを置いておく。なお、長文読むのがめんどい人向けにまとめると ・基本的な症状は4日…

最後の世代―終戦の日に寄せて

「焼夷弾で街が焼けていく景色がきれいだった」 「防空壕を探検するのは面白かった」 「下校の際に起きた空襲の後、焼死体をまたぎながら家に帰った」 「いずれ自分も学徒動員されて、国のために死ぬのだろうと思っていた」 今年で齢92だか93だかになろうと…

現実から逃げるな、の二側面

「現実から逃げるな」的な言葉を冗談混じりに投げかけられることが多い。そこで反省して自分の人生を見つめ直していたのだが、この言葉には実は •主体性を持って自分の人生に責任持って生きろよ •人間社会(ないし所属組織)における責任を果たせ」 の、2種…

惰性でマスクを着けている

近頃外を歩いていて、マスクを外している人を頻繁に見かけるようになった。着けている:外しているは体感では1:1、ひょっとしたら外している人のほうが多いかもしれない。特段と暑い今日この頃であるし、5類に移行もしたことだし、「まぁ、そろそろいいだろ…

このブログ、気づけば10年目らしい

さっき急に気づいたのだが、このブログは今年度で10年目になるらしい。じゅうねん……10年ブログを継続したことよりも、その間に私が18歳から28歳になったということのほうが、私にとっては衝撃的である。もう28かよ。こわ。 とはいえ、10年ブログを続けたこと…

インプットの量と質

「普段関わりのない領域について情報を収集し、企画を立てる」という仕事の性質上、日がな一日今まで聞いたことのない記事やら本やらを眺めていることも多い。 自然、一日のインプットは超膨大な量になる。それらすべてを裁こうとすると、一つ一つについて吟…

社会人・楽器未経験からチェロを2年半習って得た気づき

社会人2年目の7月、仕事にもちょい慣れたぐらいのころからチェロを習い始めてはや2年半が経った。学校での音楽の授業や体験レッスンだったりを除いて、本式で楽器に触れるのはこれが初だ。 習い始めに調べた折では、「社会人でチェロを習い始める人」はそこ…

●●のおかげです

「感動の超大作」「全米が泣いた」など、無数にある使い古された誇大コピーの一つに、「これで人生が変わる」というものがある。私はこれを見るたびに、ちょっとした引っ掛かりを覚える。 まず、「人生ってそんな簡単に変わんなくね?」という疑問がある。自…

2023年:温かい肉まんひとつ

おくらばせながら、明けましておめでとうございます......とだけ書いて放置して以降、早1週間超が経ちました。あらためまして、おめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 成人の日も終わりましたが、人によって、「正月気分ももう終わりか」…

ワーク・ライフ・バランス

今日朝起きた際に「電車乗って会社行くのだる」と思い、突発的に有給を取った後、なんだかんだ軽く仕事をしたり髪を切ったりしながら考えたことを、つらつらと書きます。 書き終わってから読み返すと話の連続性がかなり悪いけれども、備忘録メモと思って許し…

どこまでも関係のない私の話 ※ポエム記事

『ヒストリカルガイド・ロシア』を読むのはどうか、とふと思い立った。 ロシア (ヒストリカル・ガイド) 作者:和田 春樹 山川出版社 Amazon 初めてこれを手にしたのは大学生のときだ。と、はっきりいえるのがなぜかというと、大学図書館で借りて間もなく紛失…

「趣味を仕事に活かす」とは言われても「仕事を趣味に活かす」とはあまり言われないよね

本記事の核はタイトルの通りなんですが、もうちょい細かく説明します。 ■社会人3年目で立ちはだかる「仕事とプライベート」問題 「仕事はそこそこで、プライベートの時間が充実できたらいいや」 「仕事に打ち込むのって確かに大事だろうけどさ、それって人生…

自立した個のなせる技:『他者の靴を履く アナ―キック・エンパシーのすすめ』 ブレイディみかこ 文藝春秋

わたしの息子が英国のブライトン&ホーヴ市にある公立中学校に通い始めた頃のことだ。 英国の中学校には「シティズンシップ教育」というカリキュラムがある。息子の学校では「ライフ・スキルズ」という授業の中にそれが組み込まれていて、議会政治についての…

【ゲーム感想】『うたわれるもの 偽りの仮面/二人の白皇』

しかしこりゃ、追加労働手当を貰わんと割に合わん (本作の台詞より) 昨日の夜にクリアして、寝て起きたら余韻がすげえ。 おかげで今日一日、仕事しながらつねに片隅にうたわれるものがありました。 store.steampowered.com ◾️一行あらすじ ヤマト國を旅し…

亡霊のような生:『JR上野駅公園口』 柳美里 河出文庫

人生は、最初のページをめくったら、次のページがあって、次々めくっていくうちに、やがて最後のページにたどり着く一冊の本のようなものだと思っていたが、人生は、本の中の物語とはまるで違っていた。文字が並び、ページに番号は振ってあっても、筋がない…

3月前半の新刊で面白そうなものをあげてく

直近の新刊を息抜きによくチェックしているのですが、ふと「これ読みたいな~という気持ちだけでブログにしてもいいのでは?」と思ったので、書いてみようという記事です。 ちなみに、新刊チェックはhontoさんの以下のURLが非常に便利(ただ、どこまで網羅性…

編まれた本をさらに編む:『本のリストの本』 創元社 2020年

本のリストを読む面白さは、とくに目的を持たずに本屋や図書館の棚を逍遥するときの気分に似ています。好きな作家の隣にまったく未知の作家の本があったり、ある分野の棚に意外な本が混じっていたり(今回の新型コロナウイルス禍によって、しばらく棚に立ち…

『シン・エヴァンゲリオン』 にわかの感想

1995年に始まったということで、何気にエヴァンゲリオンシリーズとは同い年です。 ど真ん中の世代かと言われるとまったく違うのですが、再放送の際にお茶の間で流れるのを、なんとなく家族で見る、という程度には親しんできた作品ではありました(お茶の間で…

『だれでもない庭 エンデが遺した物語集』 ミヒャエル・エンデ 岩波現代文庫 2015年  

その人はかれ自身を遺失物収容所へ届け、棚の上にすわった。 時折、職員に所有者が連絡してこなかったかとたずねる。 年月がすぎてから、かれは彼自身をうけとった。みつけたのは、かれだったから。 (「うしなわれた人」 本著p63) 所有者が連絡してこなか…

2020年の振り返りとよかったものとか

感染者数が日に日に増していく今日この頃ですが、皆さんいかがお過ごしでしょーか。こちらは仕事はもう納めまして、のんべんだらりと日々を過ごしております。 今年は後代、 「コロナウイルスの出現により生活が激変した」 とか記録される年かもしれませんよ…

『海をあげる』 上間陽子 筑摩書房 2020年10月

無音のような耳であっても、いつかどこかで新しい音に破られる。私にその日がくるのかわからない。でもそれは楽しいことだと、インタビューの帰り道では心が弾む。 あれからだいぶ時間がたった。新しい音楽はまだこない。それでもインタビューの帰り道、女の…

8/13のチラシの裏

■■熱意のない文章に価値はないのか 数カ月前、さる文章過激派の知人が混じっていた会話の中で、以下のような趣旨の発言が飛び出しました。 「伝えたいことがないならネットに公表すんなボケナス」 さすがにもうちょい語彙は綺麗でしたが、 さいわい私に向け…

妖怪手首見せ

「そういえば、他人に手首見られるの平気になったの?」 とふと聞かれ、そういやそんな時代があったと思い出したのはつい先日のこと。 自分の手首を意識するようになったのは、小学生のときにみたニュースだか夢だかで、「理科の実験中、誤って手首を切って…

百折不撓のおじさん、王位獲得によせて

木村一基(46歳)が、自身初となるタイトルを獲得し、「木村王位」となった 歴史的な瞬間から数時間が経ち、俺は今祝杯の日本酒、天狗舞を飲みながら、この記事を書いている。 正直、「木村さんが王位の世界線の空気うめえ~~~!!」とかいいかねない テン…

4月から働き始めて考えてること

お久しぶりです。 前回記事以来、一回も投稿画面を開くことなくダラダラと日々を過ごしておりました。 皆さまにおかれましても、各々有為無為に日常を送っていらっしゃることと存じます。 さて、表題の件につきまして、 4月から新卒として、しかも運よく本に…

いるためにあるコミュニティ:『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』 東畑 開人 医学書院 2019年

これ(※通過型デイケア)に対して、居場所型デイケアでは、必ずしも「通過」が前提とされない。実際、多くのメンバーさんがデイケアを通して社会復帰していくのではなく、デイケアに留まり続ける。だから、居場所型デイケアはときに、「終の棲家系デイケア」…