寝楽起楽

最近は頑張って読書感想ブログにしてます。

                ネタバレには配慮しない感想ブログです。

一押しのもの

教養の積みかた:『霧のむこうに住みたい』 須賀敦子 河出文庫 2014年

街中が美術館みたいなフィレンツェには、「持って帰りたい」ものが山ほどあるが、どうぞお選びください、と言われたら、まず、ボボリの庭園と、ついでにピッティ宮殿。絵画ではブランカッチ礼拝堂の、マザッチオの楽園追放と、サン・マルコ修道院のフラ・ア…

大森靖子を聴いている(ただ良いわっていってるだけの記事です)

www.youtube.com ぶっちゃけこのLIVE映像とか、初見はドン引いた。 ↓歌手概要 弾き語りを基本スタイルに活動する、新少女世代言葉の魔術師。音楽の中ならどこへだって行ける通行切符を唯一持つ、無双モードのただのハロヲタ。あとブログ。 (公式サイトから…

哀愁背負うマン:『若山牧水歌集』 伊藤一彦編 岩波文庫 2004年

・白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ 哀愁牧水。 若山牧水歌集 (岩波文庫) 作者: 伊藤一彦 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2004/12/16 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 11回 この商品を含むブログ (10件) を見る ○内容 23才~43才…

『絶滅寸前季語辞典』『絶滅希求季語辞典』 夏井いつき ちくま文庫

読んでも役に立たないことにかけては、右に出るものはないかもしれない。が、もともと俳句なんぞは役に立つはずもないものであって、むしろ役に立たないものとしての誇りを胸に、堂々と詠まれ続けていくのが俳句だとも思っている。 (『寸前』、まえがきから…

最近応援している人ら

www.youtube.com 声がかっこいい。 こんなロックは知らない 要らない 聴かない君が上手に世間を渡っていくけど聴こえているかい この世の全ては大人になったら解るのかい こんな曲は絶対聴いてないはずと感じている「君」に、聴こえているかいと呼びかけてる…

『少女終末旅行』観て読んだ感想

(原作1巻から) いつもの如く凄いネタバレします。 後未読勢にはよくわからんかも。 www.youtube.com 少女終末旅行 1 (BUNCH COMICS) 作者: つくみず 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2014/11/08 メディア: コミック この商品を含むブログ (18件) を見る ○…

『万引き家族』 是枝裕和監督 2018年

www.youtube.com ネタバレしまくるんで、大丈夫な人だけどうぞ。 後観た直後なんでまわりくどかったりする部分あるかもですけど、それはまあいつものことですね。 ○あらすじ 色んな事情を抱えつつなんとなく寄り合って万引きなどもやりながら暮らしてた血の…

読んでなくても語りたい:『『罪と罰』を読まない』 岸本佐知子・吉田篤弘・三浦しをん・吉田浩美』 文藝春秋 2015年 

浩美 そうか、三人称の小説なんだ。なんとなく一人称なのかと思ってた。 篤弘 たしか、主人公はラスコなんとかーー。 岸本 ラスコーリニコフ。 篤弘 その名前は、いきなり出てくるんですか?「彼は」ではなく、いきなりラスコール? 岸本 ラスコーリ……ニコフ…

プロフェッショナル・俳句の流儀:『他流試合ーー俳句入門真剣勝負!』(講談社+α文庫)

兜太 でね、そのことを別の角度から言うと、今日あるような俳句の一句一句、これはもともと正岡子規が、歌仙形式ーー後から虚子が連句って言ってますけど、連句の発句を独立させたんですね。それを俳句と呼んだんですけど。連句の発句というのは言うまでもな…

20代男子がセンスマウンティングしたくて作ったプレイリスト

要は好きな曲詰め合わせです。全21曲。 公式PVが上がってない場合はitune musicから引っ張りました。 また際限なくなるので1アーティストにつき1曲にしてます。 〇「深夜高速」 フラワーカンパニーズ //www.youtube.com 自分が音楽に興味をもったきっかけ…

これが直木賞作家だ!『この話、続けてもいいですか。』 西 加奈子 ちくま文庫 2011年

私の父の、酔ったときの口癖は「そういう世界」です。そのときのポーズも決まってます。親指を突き立てない「グー」サイン。ハタから見れば握りこぶしに力を入れているだけのような状態で、元気に「そういう世界!」 。どういう世界?私の統計によると、言葉…

本を焼き、心を焼き:『華氏451度』 レイ・ブラッドベリ 伊藤典男訳 早川書房

火を燃やすのは楽しかった。 ものが火に食われ、黒ずんで、別の何かに変わってゆくのを見るのは格別の快感だった。真鍮の筒先を両のこぶしににぎりしめ、大いなる蛇が有毒のケロシンを世界に吐きかけているのを眺めていると、血流は頭の中で鳴り渡り、両手は…

孤独に浸る人々:『千年の祈り』 イーユン・リー 篠森ゆりこ訳 新潮社 2007年

このご先祖様の物語は、わが町の歴史上もっとも輝ける一頁だ。まるで夜空に華麗にひらめく一発の花火のようだ。だがあとには闇がのしかかる。まもなく最後の王朝が共和政体に倒され、皇帝が紫禁城から追放された。皇帝の誰より忠実な側近である最後の世代の…

青年期だけがない:『春日井健歌集』 春日井健 短歌研究文庫 2005年 

大空の斬首ののちの静もりか没ちし日輪がのこすむらさき (p8) いきなりこれだもんな。 春日井建歌集 (短歌研究文庫 (18)) 作者: 春日井建 出版社/メーカー: 短歌研究社 発売日: 2005/09/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 〇内容 『未青年』…

『いつか春の日のどっかの町へ』『サブカルで食う』 大槻ケンヂ 角川文庫

左手でマイクを握り、右手でギブソンJ-50のネックを握った。歌い続けながら、ギターを肩から外すと、いっそギタースタンドに立てかけた。そして身一つだけになってまた歌い続けたのだ。 この信じられないギター弾き語りシンガーの、歌ってる途中でギターを…

母国語に潜む嘘:『ことばと国家』 田中克彦著 岩波新書 1981年

私はここに報じられたゲンダーヌさんの行動はもちろんのこと、また、それを支持して、ひろく世に知らせるために記事にした、この文章の書き手にも共感する。(…)それだけに、「ゲンダーヌさんの母国語」にはめまいを感じるほどの当惑をおぼえたのである。 …

震わせろ縄文魂:『縄文ZINE 土』 縄文ZINE編集部 2018年

新しいことばかりが発見じゃない。自分にとって勇気が湧くような古い映画だって、年の離れたお兄ちゃんが教えてくれた80年代のUKロックだって、もちろんもっともっと古い時代、歴史や縄文時代のことも誰かの大切な発見となることだってあるだろう。 レコード…

沈む館からの脱出:『遠い声 遠い部屋』 トルーマン・カポーティ 河野一郎訳 新潮文庫 1955年(原著1948年)

ポーチの上の3人は、木版画にきざまれた姿のようであった――りっぱな枕の王座にすわった老人、主人の膝に寝そべり、その足元にぬかずく小さな召使を、溺れゆく光の中でじっと見守っている黄色い愛玩動物、そして祈祷を捧げるかのように、ひときわ高くさし上げ…

現在形の過去を生きる:『記憶/物語』 岡真理 岩波書店 2002年

物量にものを言わす米軍に対し、弾薬も底をついた日本兵は、敵軍を驚かすために英語で叫び声を上げながら突撃した。元大尉は語る。突撃してきた日本兵たちのひとりがこう叫んだのだという。 「ヘル・ウィズ・ベイブ・ルース!」(Hell with Babe Ruth「ベイ…

たわだ語の思想:『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』 多和田葉子著 岩波現代文庫 2012年

人間だけではなくて、言語にもからだがある、と言う時、わたしは一番、興奮を覚える。日本語にも、たとえば、文章のからだ、「文体」という言葉がある。文章はある意味を伝達するだけではなく、からだがあり、からだには、体温や姿勢や病気や癖や個性がある…

無貌の意思:ジャック・ロンドン「萎えた腕」他感想 雑誌『MONKEY』VOL7より

「我らは知っている。父親から、そのまた父親から一部始終を聞いた。彼らはまるで子羊のようにやってきた。もの静かなしゃべり方をした。連中がもの静かにしゃべったのも当然だ。当時は我らのほうが数が多く、強力で、すべての島を支配していあたのだから。…

発掘された新概念:『中動態の世界 意思と責任の考古学』 國分功一郎 医学書院 2017年

私は毎日さまざまなことをしている。たえず何ごとかをなしている。 だが、私が何ごとかをなすとはいったいどういうことだろうか?どんな場合に、「私が何ごとかをなす」と言えるのだろうか? たとえば、私が「何ごとかをさせられている」のではなく、「何ご…

有機体を為す街:『乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ話』 ラティフェ・テキン著 宮下遼訳 河出書房新社 2014年(原著1984年)

一日中巨大なダンプカーが都市から出るゴミを運んで来ては捨てていく、とある丘の上に幾つものゴミ山がそびえていた。ある冬の晩のこと、そのゴミ山から少し離れたところに松明のあかりをたよりに八軒の一夜建てが築かれた。翌朝、一夜建ての屋根にその年は…

ここは地獄、どこでも地獄:『優しい鬼』 レナード・ハント 柴田元幸著 朝日新聞出版 2015年

むかしわたしは鬼たちの住む場所に暮らしていた。わたしも鬼のひとりだった。わたしは今年寄りでそのころは若かったけれど、じつはそんなにすごくまえの話ではなく、単にわたしにはめていた枷を時が手にとってねじっただけのこと。いまわたしはインディアナ…

ふわふわしたおじさんの軍団:『僕の名はアラム』 ウィリアム・サローヤン著 柴田元幸訳 新潮文庫 2016年(原著1940年)

僕が九歳で世界が想像しうるあらゆるたぐいの壮麗さに満ちていて、人生がいまだ楽しい神秘な夢だった古きよき時代のある日、僕以外のみんなから頭がおかしいと思われていたいとこのムーラッドが午前四時にわが家にやってきて、僕の部屋をこんこん叩いて僕を…

愛の爆弾:『こちらあみ子』 今村夏子著 2014年 ちくま文庫

スコップと丸めたビニル袋を手に持って、あみ子は勝手口の戸を開けた。ここ何日かは深夜に雨が降ることが多かった。雨が降った翌日は、足の裏を地面から引きはがすようにしてあるかなければならないほどぬかるみがひどかった表の庭に通じる道も、昨日丸一日…

穏やかな魑魅魍魎:『御命天纏佐左目谷行』 日和聡子 講談社 2014年

影は、楡の木陰で、こちらを見ていた。 冥い、黄色い目だった。はじめは見ぬふりをしようとした。しかし、無理だった。 釘付けにされ、引き寄せられた。こちらから、近づいていった。声はかけなかった。木陰に入り、そばへ寄ると、影は黙って背を向け、幹を…

空飛ぶばかりじゃいられない:『魔女の宅急便』 宮崎駿監督 1989年

www.youtube.com 魔女の宅急便 [DVD] 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 発売日: 2014/07/16 メディア: DVD この商品を含むブログ (9件) を見る 言わずと知れた名作。見たことないと抜かす知人が居たので借りて一緒に見た。 〇あらす…

圧倒的情感:『老妓抄』岡本かの子 新潮文庫 1950年

目立たない洋髪に結び、市楽の着物を堅気風につけ、小女一人連れて、憂鬱な顔をして店内を歩き廻る。恰幅のよい長身に両手をだらりと垂らし、投げ出していくような足取りで、一つところを何度も廻り返す。そうかと思うと、紙凧のようにすっとのして行って、…

なしくずしの冒険:『オズの魔法使い』ライマン・フランク・ホーム 柴田元幸訳 2013年

「マンチキンの国へようこそ、この上なく高貴なる魔法使いさま。東の国の悪い魔女を退治してくださり、民を囚われの身から解きはなってくださったこと、わたくしどもみな心から感謝しております」 この演説に、ドロシーは茫然としてしまった。あたしのことを…