寝楽起楽

ネタばれには配慮しない、感想/紹介ブログです。毎週1回更新 +α を目指したかった。

空白を埋める:『家(チベ)の歴史を書く』 朴 沙羅著 筑摩書房 2018年

存在すると思われていない世界の人々は、しかしごく当たり前に生きていて、彼らの過去と現在を生きている。記憶の中で、過去の様々な経験は一つに溶け合っていて、彼らはその経験と共に生きている。(…)誰のために、何のために、私は「家(チベ)の歴史」を…

聴く・する・語る:『音楽の聴き方』 岡田暁生著 中公新書 2009年

音楽は決してそれ自体で存在しているわけではなく、常に特定の歴史/社会から生み出され、そして特定の歴史/社会の中で聴かれる。どんなに自由に音楽を聴いているつもりでも、私たちは必ず何らかの文化文脈によって規定された聴き方をしている。そして「あ…

遊んだ 読みにくさ無限大

こんな 感 じ で 適 当 な 文章で私って 漢 字 を 作って み た ら な ん か 面 白 く な ら ない か という思いつき。 改めて自 がち 我 し に 定 つ 想 い を て 私 私 思 に 考 風 し な よ ん う こ と くな する とんなと だけれども実際生活のうえでは…

よっぱらないながら今日考えたことについて書く 私と社会

ライフ・ヒストリーというものについて授業で学んでいる。 これがどういうものか説明すると、一般的にいう歴史というものは客観性というものをまず暗黙のうちに前提としているところがある。 授業では被爆者の方々の例が出るので、この記事でもそれを参考に…

教養の積みかた:『霧のむこうに住みたい』 須賀敦子 河出文庫 2014年

街中が美術館みたいなフィレンツェには、「持って帰りたい」ものが山ほどあるが、どうぞお選びください、と言われたら、まず、ボボリの庭園と、ついでにピッティ宮殿。絵画ではブランカッチ礼拝堂の、マザッチオの楽園追放と、サン・マルコ修道院のフラ・ア…

大森靖子を聴いている(ただ良いわっていってるだけの記事です)

www.youtube.com ぶっちゃけこのLIVE映像とか、初見はドン引いた。 ↓歌手概要 弾き語りを基本スタイルに活動する、新少女世代言葉の魔術師。音楽の中ならどこへだって行ける通行切符を唯一持つ、無双モードのただのハロヲタ。あとブログ。 (公式サイトから…

言語動物水族館内臓爆発:『小笠原鳥類詩集』 小笠原鳥類 現代詩文庫 2016年

暗い人形のガラスの棚は、のように数年間放置され、コンクリートも生きた魚礁・魚醤、腐敗水族館、あえかなくさっていておかしい、やわらかくくる緑色の寒天ゼリーみずうみ、湖・完全水槽、紫色の湖・水槽全集緑色の怪物という。ブロッコリーが浮かぶ、海底…

日本を変えない書物たち:『こんな本があった!江戸珍奇本の世界』 塩村 耕著 家の光協会 2007年 

(占い書『尚占影響』について) 相談人は、生活に困って娘を女郎に売った父親だ。その娘に恋人ができた。ところが、相手は財布の軽い色男。別れよと命じても聞かぬどころか、別の店に住み替えをしたいという。それで得たカネを男に貢ぐというのだろう。そこ…

「未来を思い出すために/ドミニク・チェン(web連載)」を読む

彼女の身体がはじめて自律的に作動したその時、わたしの中からあらゆる言葉が喪われ、いつかおとずれる自分の死が完全に予祝されたように感じた。自分という円が一度閉じて、その轍を小さな新しい輪が回り始める感覚。自分が生まれたときの光景は覚えてはい…

消えていった人達:『旅芸人のいた風景 遍歴・流浪・渡世』 沖浦和光著 河出文庫 2016年(単行本2007年)

その頃の日常風景の記憶は、薄墨で描いた水墨画のように輪郭がぼやけているが、今でも瞼に焼き付いているのは、西国街道を旅していた遊行者や旅芸人の姿である。 西国三十三箇所めぐりの「巡礼」をはじめ、「虚無僧」「六部」「山伏」などの旅姿をよく見かけ…

哀愁背負うマン:『若山牧水歌集』 伊藤一彦編 岩波文庫 2004年

・白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ 哀愁牧水。 若山牧水歌集 (岩波文庫) 作者: 伊藤一彦 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2004/12/16 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 11回 この商品を含むブログ (10件) を見る ○内容 23才~43才…

公開ラブレター:『花は泡、そこにいたって会いたいよ』 初谷むい 書肆侃侃房 2018年

・ひらかれてひらきっぱなしの欠陥でもう誰といたってねこじゃらし 遠いな~ 花は泡、そこにいたって会いたいよ (新鋭短歌シリーズ37) 作者: 初谷むい 出版社/メーカー: 書肆侃侃房 発売日: 2018/04/16 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブロ…

短歌ムック『ねむらない樹』読んだ 

ある日、つぶやいた。短歌の雑誌をつくるほどの力はないけど、年二回のムックならどうだろう。一つには、『笹井宏之賞』の発表媒体が欲しい、ということ。もうひとつは、次々に短歌の世界に加わってくる若い歌人達の受け皿がほしいということ。そんな漠然と…

『絶滅寸前季語辞典』『絶滅希求季語辞典』 夏井いつき ちくま文庫

読んでも役に立たないことにかけては、右に出るものはないかもしれない。が、もともと俳句なんぞは役に立つはずもないものであって、むしろ役に立たないものとしての誇りを胸に、堂々と詠まれ続けていくのが俳句だとも思っている。 (『寸前』、まえがきから…

最近応援している人ら

www.youtube.com 声がかっこいい。 こんなロックは知らない 要らない 聴かない君が上手に世間を渡っていくけど聴こえているかい この世の全ては大人になったら解るのかい こんな曲は絶対聴いてないはずと感じている「君」に、聴こえているかいと呼びかけてる…

意外性の連続:『セーラー服と機関銃』 相米慎二監督 1981年

www.youtube.com 80年代すげえ。 セーラー服と機関銃 ブルーレイ [Blu-ray] 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 2012/09/28 メディア: Blu-ray クリック: 1回 この商品を含むブログ (6件) を見る ○あらすじ 親を亡くし天涯孤独の身となった女子高生、星泉(…

『少女終末旅行』観て読んだ感想

(原作1巻から) いつもの如く凄いネタバレします。 後未読勢にはよくわからんかも。 www.youtube.com 少女終末旅行 1 (BUNCH COMICS) 作者: つくみず 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2014/11/08 メディア: コミック この商品を含むブログ (18件) を見る ○…

『万引き家族』 是枝裕和監督 2018年

www.youtube.com ネタバレしまくるんで、大丈夫な人だけどうぞ。 後観た直後なんでまわりくどかったりする部分あるかもですけど、それはまあいつものことですね。 ○あらすじ 色んな事情を抱えつつなんとなく寄り合って万引きなどもやりながら暮らしてた血の…

読んでなくても語りたい:『『罪と罰』を読まない』 岸本佐知子・吉田篤弘・三浦しをん・吉田浩美』 文藝春秋 2015年 

浩美 そうか、三人称の小説なんだ。なんとなく一人称なのかと思ってた。 篤弘 たしか、主人公はラスコなんとかーー。 岸本 ラスコーリニコフ。 篤弘 その名前は、いきなり出てくるんですか?「彼は」ではなく、いきなりラスコール? 岸本 ラスコーリ……ニコフ…

プロフェッショナル・俳句の流儀:『他流試合ーー俳句入門真剣勝負!』(講談社+α文庫)

兜太 でね、そのことを別の角度から言うと、今日あるような俳句の一句一句、これはもともと正岡子規が、歌仙形式ーー後から虚子が連句って言ってますけど、連句の発句を独立させたんですね。それを俳句と呼んだんですけど。連句の発句というのは言うまでもな…

人の手帳を読んできた。

すれちがう人になんとはなしに顔を向けながら、「思考が読み取れたりしねえかな」とか思ったこと、ありませんか? 私はあります。相手がものすごい奇抜なファッションだったり、一生交わりそうもないようなタイプだったらなおさら。 これから先全く縁のない…

20代男子がセンスマウンティングしたくて作ったプレイリスト

要は好きな曲詰め合わせです。全21曲。 公式PVが上がってない場合はitune musicから引っ張りました。 また際限なくなるので1アーティストにつき1曲にしてます。 〇「深夜高速」 フラワーカンパニーズ //www.youtube.com 自分が音楽に興味をもったきっかけ…

何時間でもプレイ可:『ゲームSF傑作選 スタートボタンを押してください』 D・H・ウィルソン&J・J・アダムズ編 仲原尚哉・古沢嘉通訳 創元SF文庫 2018年

「なにやってるの」わたしはいった。 「 『ダイヤモンド・ナイツ』のパスワードがないかなと思って」トードは慌てて答えた。 「おまえ、ソリーのキャラのアイテムを全部自分のキャラに移すつもりだっただろう」デッカーが言った。「最低な奴だな。葬式に来て…

これが直木賞作家だ!『この話、続けてもいいですか。』 西 加奈子 ちくま文庫 2011年

私の父の、酔ったときの口癖は「そういう世界」です。そのときのポーズも決まってます。親指を突き立てない「グー」サイン。ハタから見れば握りこぶしに力を入れているだけのような状態で、元気に「そういう世界!」 。どういう世界?私の統計によると、言葉…

言葉の円盤投げ:『熊の敷石』 堀江俊幸 講談社文庫 2001年

木の鎧戸にくりぬかれた菱形の穴から、形どおりの幅でやわらかい光の筋が素焼きタイルの床に落ちていた。部屋の空気じたいはきれいに澄んでいてむしろ涼しいくらいだったが、壊れてのばすことのできなくなったソファーベッドの背もたれに顔が密着するような…

本を焼き、心を焼き:『華氏451度』 レイ・ブラッドベリ 伊藤典男訳 早川書房

火を燃やすのは楽しかった。 ものが火に食われ、黒ずんで、別の何かに変わってゆくのを見るのは格別の快感だった。真鍮の筒先を両のこぶしににぎりしめ、大いなる蛇が有毒のケロシンを世界に吐きかけているのを眺めていると、血流は頭の中で鳴り渡り、両手は…

孤独に浸る人々:『千年の祈り』 イーユン・リー 篠森ゆりこ訳 新潮社 2007年

このご先祖様の物語は、わが町の歴史上もっとも輝ける一頁だ。まるで夜空に華麗にひらめく一発の花火のようだ。だがあとには闇がのしかかる。まもなく最後の王朝が共和政体に倒され、皇帝が紫禁城から追放された。皇帝の誰より忠実な側近である最後の世代の…

青年期だけがない:『春日井健歌集』 春日井健 短歌研究文庫 2005年 

大空の斬首ののちの静もりか没ちし日輪がのこすむらさき (p8) いきなりこれだもんな。 春日井建歌集 (短歌研究文庫 (18)) 作者: 春日井建 出版社/メーカー: 短歌研究社 発売日: 2005/09/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 〇内容 『未青年』…

全文情愛:『恋文の技術』 森見登美彦 ポプラ文庫 2011年

四月九日 拝啓 お手紙ありがとう。研究室の皆さん、お元気のようでなにより。 君は相も変わらず不毛な大学生活を満喫しているとの由、まことに嬉しく思います。 その調子で、何の実りもない学生生活を満喫したまえ。希望を抱くから失望する。大学という不毛…

『いつか春の日のどっかの町へ』『サブカルで食う』 大槻ケンヂ 角川文庫

左手でマイクを握り、右手でギブソンJ-50のネックを握った。歌い続けながら、ギターを肩から外すと、いっそギタースタンドに立てかけた。そして身一つだけになってまた歌い続けたのだ。 この信じられないギター弾き語りシンガーの、歌ってる途中でギターを…