寝楽起楽

最近は頑張って読書感想ブログにしてます。

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『誰も知らない』 2004年

映画感想。

 

 

誰も知らない

誰も知らない

 

 

 
『誰も知らない』は、育児放棄がなされた子供たち四人の生活を描いた、実話を下敷きにしたフィクション映画である。
 
主演の柳楽優弥(当時14歳!)が、史上最年少および初の日本人としてカンヌで主演男優賞を受賞し話題になったとのことで、観た人は多いのではなかろうか。
 
しかしこれは今まで観たことのないタイプの映画であった(そもそも映画ほとんどみないけど)。
 
映画や小説というものは、つくりもののセットをくみ上げておいて、その中に観客をどれだけ引き込めるか、というところで勝負するものだと僕は思っていた。
 
しかしこの映画は違う。監督の意向により「演技をしない子供」を集め、台本は渡さずその場の「こんな感じにして」という指示だけで撮るという手法により、観ている者はまるでこの僕らが住んでいる世界の中の話が展開されている様な錯覚に陥る。
 
だからといってドキュメンタリーというわけではない。あれも、こう見せたいという出演者の願望と、編集者の意図が入っているという点で、立派な作りものである。
 
しかし「誰も知らない」には、そうした視線は見られない。淡々と子供たちの日常を、ただ描き出す。その演技はどこまでも自然である。
というか、あれは演技ではない。素である。そうした「自然のままでいられる子供」だけが選択的に集められている。
 
ゆえに観終わった後も、観客は不思議な感慨にとらわれる。普通の映画や小説ならば、終了後は夢から覚め、現実に戻ってきた様な心地になるものだ。
だが、この映画は、先ほども言った様に、この世界の中でのお話になる様に作られている。
ゆえに、終わった後も、今もどこかの町で、あの子供達が、ひっそりと、「誰も知らない」ままに、あの生活を続けているのではないか、という気になってしまう。
 
つくづく面白い映画を観れたと思う。この映画に携わった人達の手腕には、ただ脱帽するほかない。