果てが見えないほど広い丘に家族で来ている。
その丘は人工的な緑で覆われており、見回すと地面を掘り返している人がポツリポツリと見受けられる。どうやらこの丘のどこかにとても貴重な何かが埋まっており、人々はそれを探しているらしい。
しかし見つかるものは何故だか大抵、こどもの写真と無地の色紙である。それは白黒だったりカラーだったりし、また写された当人は既に故人である場合もある。それはしかるべき人の元に返される、成長した本人や、その親族などに。この場にいる大半は、おのれの写真が出てくることを期待して待っている人である。私の兄はその写真を渡す係に従事している。
発掘風景を眺めている人々の間を、私は小学3年生の時の国語のジャポニカ学習帳を持って歩いている。そのノートの中身は落書きで埋まっている。どうやら私がここに来るのは二回目で、一回目当時小学生だった私は誰彼構わずそのノートを差し出して絵を描いてください、とお願いをしたらしい。
成長した私は、その時に絵を描いてくれた人を探している。同じようにまた、絵を描いてくださいと頼むために。