琉球王国の名家に生まれ、結婚を機に台湾、それから夫に従って東京や名古屋を転々とした女性の、実話を元にしたフィクション。途中離婚したり七つ年下の学生といい仲になったり作家としてデビューしかけたり色々する。
沖縄の女性だから、という時代の差別がひどく、決心して強く立とうとしても状況に押し負け、自分のやりたいこともよく分からなくなり・・・といった、格別に不幸だとはいえないけど、でも確実に本人にとってはいい状況ではない感じがずっと続く本。
自分の中にある自分でないもの(それは本名であるツタであったり、あるいは中盤から本名にもなった筆名の千紗子だったり、また終盤にはまってる宗教の神様であったりする)との格闘が主題だと思って読んだ。それがまたさっぱり上手くいかなくて悲しい。
ただ明確に作中で何かを押し出しているような風ではなく、全体的には久路ツタさんの半生をただ綴っていっているだけなので、ぼんやり読むと表面をなぞるだけで終わってしまう。