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空飛ぶばかりじゃいられない:『魔女の宅急便』 宮崎駿監督 1989年

 

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魔女の宅急便 [DVD]

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言わずと知れた名作。見たことないと抜かす知人が居たので借りて一緒に見た。

 

〇あらすじ

 魔女の修行として13才で親元を離れた少女が宅急便する

 

〇考察・感想

 新しい発見がちょこちょこあって楽しかった。

 

箒にまたがって飛ぶまでの、髪の毛がざわざわしてく描写がすごいすき。
人の感情によって髪が動くのをアニメで実現したのはジブリが最初、ていう嘘か本当かわからん話を聞いて以来、観るときそこを追っかけるようになった。    

 

 一番自分の目節穴だと思ったのは、ニシンのパイ突っ返したあの女の子が飛行船見学の時にトンボの仲間の一人として映ってる=トンボが誘ってきたパーティーってあのパーティーだった、ってとこ。なぜ今まできづかなんだ。

 

 あと、物語の展開に直接関係ないカットがちょこちょこ挟まれてる、というのも新しい気づき。画家の女の子の家行く際に、重い荷物しょってるのを気遣って、坂道で後ろを押してあげるシーンとか。

 

 記憶にはあんまり残らない、こういうちょっとした遊びが入ることで、なんとなく観てる側としては息がつけるし、世界観を広げるのにも一役買ってる。すごい。

本筋をずーっと見せられると緊張しちゃって、繰り返し何度も観る、ということが気楽にしにくい。このあたりの気遣いが地上波で放送されまくる理由の一つなんではないかと。

 

 

 

 今回の考察では、一番の疑問となるであろう「なぜキキは飛べなくなり、ジジと話せなくなったのか」についてを解釈していく。

 

 まず押さえるべきは、キキは魔女としては「空を飛ぶ魔法」しか使えないという点。

 

 飛ぶ、という言葉から思い浮かぶイメージは自由ということである。しかしキキのそれはとくに、地に足がついていない。

 

 最初に街に降り立った時、人に迷惑がかかることを考えずに町中を飛び、その結果お回りさんに事情聴取されるシーンからは、彼女が全く世間を知らない少女であることが明らかにされる。

 

 反対に、キキのお母さんは薬を作ることで整形をまかなっているらしい。その仕事場は多種多様な植物が置かれている。そこからは、どっしりと大地に根を下ろしたような安定感が見いだされ、示唆的である。

 

 その失態でめちゃめちゃ落ち込んだ少女は、パン屋さんの好意に触れ、生来の気持ちのよさを取り戻し、前向きに自分にできることを考えて、宅急便を始める。

 

 こんときに、「私、飛ぶことしか能がないでしょ?」と明るく言うの、つええ・・・と思った。それしか能はない、けど逆にいうと「これはできる!」と心から確信してる。

 

 が、その「空を飛ぶ」という技能は、トンボと飛行船を見に行った日に消え失せてしまう。

地元の女の子たちと明るく話すトンボを見たからだ。

 

    ここでおそらくは明確に恋心を自覚する。で、独自解釈に入るが、自分がこの街の普通の子だったらいいのに!ってちょっと考えてしまったんじゃないかと思う。

 

    思い返すと、垢抜けたファッションをした子とすれちがい、「もっと可愛い服だったら良かったのにね」とジジに愚痴をこぼしたり、あるいは店番中に窓の外に写ったデートに出かける男女を羨ましそうに眺めたり、そういったものに憧れる描写は随所に挟まれていた。

 

     またキキがまだ旅立つ前に、父に思いっきり抱きついたり、またパン屋の主人にも飛びついていくシーンがある。

13才の女の子としては随分と幼い表現だ。

無論同年代の男の子と父親とでは大分異なるとは思うが、明確に異性としてキキの心に入りこんできたのはトンボが最初。

 

   ただでさえ、魔法を仕事として使っている中で、キキは故郷で守られていた昔は分からなかった、様々な現実を知っていく。

 

    そしてそれは恋の自覚で決定的になった。無邪気に空を飛びジジと会話をしていればよかった時代は終わった。

 

   ジジとは会話が成り立たなくなり、 空を飛ぶ魔法が弱まった際、懸命に練習をする中でキキは箒を壊してしまう(この時、ジジと話そうとするよりも、箒をまず手に取ったというのも興味深く、つまり仕事道具としての魔法のほうを重視した=現実を見ている、ということになるか?)。

 

   ジジも箒も、共に故郷から連れてきたもので、その二つが失われていくのはつまり、キキが独り立ちを始めた証でもある。

 

   最終的には箒、というかデッキブラシに乗れるようになっているが、ジジはただ鳴くだけだ。

両方とも元どおりになると、それはまた両親に心が帰っていってしまっているということ。

あえてそうはしなかった、という所に、自分は故郷と自分の街、その両方に位置を置くことができた、キキの成長を見た。

 

 

    またもうひとつ、身もふたもない、ネットでよく冗談交じりに言われる解釈として、「魔法が使えなくなったのは第二次性徴を迎えたからだ」というのがある。

 

    これ、どうなんだろうなあとずっと思ってたので、今回見るに当たってそういう描写ってあるんか?と探してみたら、1個だけこれは、というものを発見。

 

 ジジの言葉が分からなくなり、箒で飛べるか部屋の中で試すも、すこし浮き上がって落ちてしまった後。

 

 「どうしよう・・・」と呟いて、キキは両手をお腹に当てる。そして、「魔法が弱くなってる」という一言。

 

 アニメ的表現としては、困ったときって普通頭に手をやることが多い。それをわざわざお腹に持っていった。それはつまり???

 

 と、いう読みも、まあ確かに出来なくはないのかも。ただ他には見つかんなかったです。

 

    しかし、13才の女の子の性徴表現がないかを探す成人男性、ていう構図客観視するとこれは相当なものがありますね。

事件起こしたら新聞に書かれるでこれ。 

テロップは「知的好奇心があった」かな。うひゃあ。

自分はもしかしたら取り返しのつかないことをしたのでは?

 

 以上。