※ネタバレには配慮しないです。それでも良いという方のみどうぞ
※前作以前のは見たり見てなかったりで記憶も曖昧なため、今作のみでの考察をします。
○あらすじ
10年に一度しか陸に出られない父の呪いを解きたい青年と行方知らずの父を追い求める孤児出身の天文学者の女の子が海賊にひっかきまわされながら頑張る
○考察•感想
早速だけど、ストーリーの核心に触れながら考察を始める。
ジャックスパロウは、かなり型破りな性格で描かれる。
強引な銀行強盗作戦を決行に移し金庫の中で眠りこけ、酒を飲むために(これは途中で明かされることだけど)亡き船長から受け継いだ欲しいものを指し示すコンパスを担保としてためらいなく酒場で差し出す。
敵役サラザールから「小鳥のような」と称される彼は、自分の得た宝についてさほど執着がない。それは捻った見方をすれば、海賊らしくない、ともいうことができる。
そんな、海にさえも縛られない彼だからこそ、光る石で星々を表す島に上陸することが可能となる。
もしジャックが現代に居たのであれば、彼は海ではなく空に向かったのではないかと思う。
主要人物の一人、天文学者カリーナについても考察。
女性でありながら科学を学んでいる、という点で、当時かなり先進的な人物。実際序盤で魔女として迫害されていたりする。
彼女はその合理性から、当初は青年ヘンリーの調べた伝承を全く信じようとしない。
しかし説明のつかない出来事を経験するにつれ、その考えを改めるようになる。
ここで起こっているのは科学→浪漫、という逆行。
天体望遠鏡/クロノメーターといった科学的なアイテムが初期にのみ登場するのも象徴的。
段々と彼女は物語の世界へと引きずりこまれていく。
そして後半、彼女はジャックのライバルであるバルボッサの娘であることが、やや唐突に明かされる。
バルボッサはジャックと違い、宝を大事にする典型的な海賊。彼女は実はその血を引く者だった。
今回における敵キャラ、サラザール。
彼はかつて海賊殺しでならしたスペイン人。
イギリス人ではない、というところが重要で、史実的には アルマダの海戦でスペインの誇る無敵艦隊はイギリスに破られている。
つまり彼は失われた過去の栄光。サラザールの幽霊船がジャック郎等を追いかけるイギリスの船を邪魔だと言わんばかりにはぶっ壊すシーンがとても良かった。
そして終盤、舞台は割れた海の底に移る。持つ者は海を制する、と言われたトライデントの槍は、一時サラザールの手に渡るもヘンリーによってぶっ壊される(=古い伝説の崩壊。ヘンリーはかつてのジャックの仲間ウィルの息子であり、新しい時代の到来)。
それによって呪いは解かれ、また同時に割れた海がどんどん一行に迫ってくる。
絶体絶命の危機に差しのばされるのは、上の船から降ろされた錨。それにしがみつくのはジャック、ヘンリー、カリーナ、バルボッサ、それにサラザール。
サラザールが追ってくるのをみたバルボッサは、カリーナにお前は自分にとっての宝だ、と告げサラザールを巻き込み海の底に落ちていく。
宝を守るために殉じる、それはまさしく誇り高い海賊の生き様。「海賊はつらいよな」としみじみ呟くジャックの言葉が全て。
ラスト。カリーナは自分をバルボッサと名乗る。海賊は彼女の中に受け継がれる。
航海に乗り出すジャックの前には、バルボッサの肩に乗っていた猿がやってくる。顔をひきつらせるジャックに彼が差し出すのは色んな人の手を行き渡っていったコンパス。
ジャックの肩に乗る猿。空を自由に飛ぶような存在であった彼もまた、この映画を通じて海に縛り付けられたことが示され、エンドロール。
「最後の海賊」はバルボッサ。古い因習が消え、科学が到来していく世においてしかし、その心は確かに受け継がれていく。
まあこんな風な話ですかね〜。
原題である「死人に口なし」の死人は多分サラザールですね。
バルボッサは死んでない、俺たちの心の中に受け継がれていくんだエンドだと僕は見ました。
すげえ金かかってて、スクリーンで見ると迫力が違います。
ジャックのむちゃくちゃぶりにさざなみの如く笑いが広がる、良い雰囲気の劇場で鑑賞できて満足。
以上です。