新しいことばかりが発見じゃない。自分にとって勇気が湧くような古い映画だって、年の離れたお兄ちゃんが教えてくれた80年代のUKロックだって、もちろんもっともっと古い時代、歴史や縄文時代のことも誰かの大切な発見となることだってあるだろう。
レコード店の大量のレコードから目当てを探すことを“ディグる”という。“ディグ”はもともと“掘る”という意味で今ではこの言葉はレコードだけではなくすべてのジャンルで“自ら探す”という使い方をされている。
縄文時代は土の中、文字通り掘らないことには始まらない。発掘を“ディグる”と言っている考古学者は今のところみかけないけど、良い言葉なので個人的には使ってみたい。
掘らなきゃわからない。と言っても1849年のカリフォルニアじゃないんだから、金塊は出てこない。カリブ海で大威張りだったあの伝説の海賊の宝だって埋まっていない。石油も温泉も湧き出てこない。日に焼けて、虫に刺されて、泥だらけになって発見したものの上澄みが博物館に並び、誰かに発見されるのを待っている。
驚くほどたくさんのジャンルから縄文を。びっくりするほどたくさんの本の中から『縄文ZINE』、『縄文ZINE(土)』をディグっていただきありがとうございます。この本が誰かの“小さな発見”になることを祈って、つれづれなるまゝに。
(本書 「徒然土」より)
縄文愛が伝わるいい本だった。
- 作者: 縄文ZINE編集部,望月昭秀,前田はんきち,小山けん,高橋由季,北野智也,松岡宏大,大高志帆,ヤミラ,楯まさみ,杉能信介
- 出版社/メーカー: ニルソンデザイン事務所
- 発売日: 2018/01/27
- メディア: 単行本
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〇紹介
縄文人おすすめの〇〇/立ち話、最近の縄文人/都会の縄文人/“縄弱“のための質疑応答/縄文なう/忙しい現代人のための縄文絵描き歌/こやまけんの縄文漫画、などのレギュラー陣をはじめとする様々な縄文記事が詰まった、ニッチすぎると話題のフリーペーパー『縄文ZINE』の1~4がなんと合本になりました
〇感想・考察
土偶のポーズをモデルに取らせて「ドグモ」とか、縄文なうの「JAZZを聞く #こんな土偶は嫌だ」とか、くっだらねー!と思いながら発想にいちいち笑ってしまう。確かにJAZZ聞いてたらやだよね。土鈴を聞け土鈴を!これが何なのかわからない縄弱の貴方は縄文ZINEをゲットだ!
遊びばっかの記事だけでなく、縄文時代の解説を挟んでみたり、都会の縄文人と称してラーメンズの片桐仁やタレントの藤岡みなみに登場してもらったり、アイヌ特集では『ゴールデンカムイ』の野田サトルにもインタビューを敢行するなど、「これフリーペーパーだよね?」という疑問が湧くような充実ぶり。みなみさんの、「雑誌は正しく古びていく感じがするから好き」という言葉には唸らされるものがあった。感性凄い。
サンリオのキキララの説明に唐突に北斗の拳をぶっこんできたり(あれ完全にジャギに解説食われてるでしょ)、山内清男先生をネタにしたりとやりたい放題してる姿からは、「縄文の雑誌だからって縄文時代に閉じこもる必要はないっしょ」という奔放な精神が感じ取れる。
かといって、(無理やりでもあって、そこがまた笑いどころなんだけど)一本縄文で筋を通そうとしているような心意気もあり、それが良い。
日常と等感覚で縄文が接続してる人々の脳内をたっぷり味わい、ふと顔を上げれば、目の前に移る光景のそこかしこに、貴方も縄文時代を見いだせる、かもしれない。
以上。