ネタバレしまくるんで、大丈夫な人だけどうぞ。
後観た直後なんでまわりくどかったりする部分あるかもですけど、それはまあいつものことですね。
○あらすじ
色んな事情を抱えつつなんとなく寄り合って万引きなどもやりながら暮らしてた血のつながりのない5人がある日虐待受けてた5才の女の子を拾う
○感想
是枝監督の『誰も知らない』は以前見てて、それも育児放棄されてる子供達のお話だったんだけど、あっちは最後までその共同体が崩壊しないってところが一番の肝で、めっちゃ薄ら寒い思いしたのを覚えてる。
それと比較すると『万引き家族』は、ちゃんと(っていう言葉が適切なのかもわからんが)「家族」が白日の下に晒され、駄目になるっていう過程が入るのが一番大きな変化だと思った。
その駄目になった時、それぞれが事情聴取を受けるシーン。
あそこで始めて皆のそれぞれの「家族」への正直な思いが吐露されてって、ああそんなことを思ってたんか、とか、ちゃんと歪ながら彼らなりに家族としてやっていけてたじゃんか、とか観客は見て思うわけですが、それらは全部聴取してる警察官が正論で封殺するんですね。結構腹立ちませんか?あれ。
でも考えてみると、というか考えずとも、あの6人の関係は一般的に変なんです。でもいつの間にかそれを変だと思わないようにさせられてて、それはなんでかっていったら、映画の中で「一般的な家族」が登場するシーンがほぼないからだと思うんですね。
一回樹木希林が元夫の家にお邪魔してお線香あげる場面があって、あそこすっごく違和感覚えたんですけど、あれは樹木希林が珍しく外出してるから、ってわけではなく、ああいう普通の家族が登場することが、映画内の中では不自然だったからなんですね。
「警察が発する正論」という世の中一般の倫理が映画後半で前触れなく登場して、それによってあっという間にバラバラになるのは悲しいなあと思いつつも、どうしようもないという感じもあり。そのどうしようもなさは結局のところ、彼らの形態が普通じゃないよね、てところに改めて気づいちゃうから。
あんだけ丁寧に彼ら6人の描写、絆が深まってく様子とかを見てんのに、それでも「どうしようもない」とか思っちゃうぐらい、「普通の家族観」てのが自分の中に浸透してんだなあ、て帰りの電車CMで、ハンバーグ作ってる家族みながら思いました。
是枝監督がパルムドール受賞した、その会見がニコニコで中継されてるのをたまたま観てました。そこで話題になってた、皆で上空の花火を探すのを俯瞰で撮るシーン。あれは確かに良い絵でした。
言葉以上に、雰囲気とか身振りとかで魅せるのが是枝さんは異常に上手いと個人的に思います。
『万引き家族』は『誰も』と比べちゃうとちょっと言葉に頼りすぎじゃねーかというきらいもややあったんですけど、それでも最初のシーンの、ごみごみした家でよう分からん関係性の人達が何故か共同生活してる様子とか、「ちょっと見ててみ」っていってラムネ飲んだあと大きなげっぷするとことか、是枝さんのこういうのが観たかった!を満たしてくれて良かったです。
こっからは読んでくれなくて大丈夫なんですが、「テレビ上映されるまで待つわ」って言ってる人一定数居て、確かにおっきいスクリーンで観るよりも、家のテレビで生活感に囲まれながらのほうが、却って面白いかもという感じはあります。
あるんですけど、個人的にスクリーンで観た方が絶対良いと思う部分がいくつかあって、上に挙げた花火とか、俯瞰のシーンの部分は勿論、松岡茉優がイメクラ(?)で働くシーンが凄くて、あの店の形式めちゃめちゃエロくないですか?
「完全匿名で性欲だけ発散させたい」みたいな、都合の良さ100%かよと。詳しい人に聞きたいですけど、ああいう店って実在するんですか?
もし是枝監督オリジナルだったとすると中々に変態ですよね。
実在してたら多分わりと自分ハマるタイプなんで、気をつけようと思います。まあでも松岡さんだったからこその可能性は高いですけど。
大体言いたいことは書いたので、終わります。
以上。