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寝楽起楽

最近は頑張って読書感想ブログにしてます。

『ツタよ、ツタ』 大島真寿美著 実業之日本社 2016年

 

ツタよ、ツタ

ツタよ、ツタ

 

 

 

 琉球王国の名家に生まれ、結婚を機に台湾、それから夫に従って東京や名古屋を転々とした女性の、実話を元にしたフィクション。途中離婚したり七つ年下の学生といい仲になったり作家としてデビューしかけたり色々する。

 

 沖縄の女性だから、という時代の差別がひどく、決心して強く立とうとしても状況に押し負け、自分のやりたいこともよく分からなくなり・・・といった、格別に不幸だとはいえないけど、でも確実に本人にとってはいい状況ではない感じがずっと続く本。

 

 自分の中にある自分でないもの(それは本名であるツタであったり、あるいは中盤から本名にもなった筆名の千紗子だったり、また終盤にはまってる宗教の神様であったりする)との格闘が主題だと思って読んだ。それがまたさっぱり上手くいかなくて悲しい。

 

 ただ明確に作中で何かを押し出しているような風ではなく、全体的には久路ツタさんの半生をただ綴っていっているだけなので、ぼんやり読むと表面をなぞるだけで終わってしまう。

 

 

『腰痛探検家』 高野秀行著 集英社 2010年

読書

 『はい、泳げません』に引き続き、チェコ好きの日記さんでセットのように紹介されていた本書を読了。

 

 

腰痛探検家 (集英社文庫)

腰痛探検家 (集英社文庫)

 

 

 

 早稲田大学在学時代は探検部に所属、そのまま幻の怪魚をインドで追いかけることに熱中したりしながらノンフィクション作家として生計を立てている筆者がひどい腰痛にかかり、色んな医者にかかって悪戦苦闘する話。

 

 まじでかかる医者かかる整体それぞれに違うことを言われて当惑する筆者、彼としてはとりあえずどんな手法でも治してさえくれればいいってスタンスだが、「3回通ってもらうだけで何でも治す」という評判の人にさえ匙を投げられる。

 

 最終的に筆者は自分自身でとある決断をし、そして結局原因は分からないまま何をやってもさっぱり良くならなかった腰痛は快方に向かう(といっても3時間以上立っているのはきつかったりとかはするみたいだけど、もしかしてこれは40歳ぐらいになるともはや一般的な状態なのだろうか?だとしたらすげえいやですね)。

 

 自分の病と気質に適したことをしてくれるところを見つけるには、勘と運が本当に大切なんだろう。誰に尋ねても、「だれそれは名医」と人を挙げられ、しかもそれが絶対に被ることがないというあたり、整体があふれかえるのもむべなるかな。

 

 民間療法の設立者は、大体がその元の療法にかかった結果持病が爆発的に治り、感動して自分も院を開く、というパターンが多いということをはじめて知る。

 

 あと、一回だけお酒を一緒に飲んだことのある、超能力者の秋山眞人さんがさらっと作中に不意打ちぎみに出てきて笑う。その人がちょっとさわっただけで(その日一日だけだけど)腰痛がしっかり良くなっててさらに笑った。

『魔法使いの弟子』 ロード・ダンセイニ著 荒俣宏訳 筑摩書房 1994年(単行本は1981年)  

読書

 ロード・ダンセイニは1900年代から執筆を始め、ファンタジー文学界に影響を与えた人。

 

 

魔法使いの弟子 (ちくま文庫)

魔法使いの弟子 (ちくま文庫)

 

 

 ファンタジーといえば世界を冒険してー、危機を救ってー、みたいな、ローワンシリーズとかデルトラシリーズとかそういう系かなと思って読むと失敗する。話のスケールはスペインの一地方のさらに一部分が舞台なのでめちゃめちゃ地味です。

 

 妹の結婚の持参金のために箱に黄金を一杯にしなくちゃいけなくって、でも舞台の辺りではちょっとした家柄とはいえ、家計は火の車でそんな余裕はないので、魔法使いの弟子になって黄金を作れるようになってこい、と父から命令された息子が頑張る話。

 

 途中、魔法を教わる代価に影を取られてしまい、それが原因で人里から迫害されてさあどうしようという展開になっていくが、魔法の世界では影が重要って設定、良い。ゲド戦記の一巻もそんな感じの話?なのかな?読んだことないんですが。

 

 主人公の妹コワイ。領主様はあれで果たしてハッピーといえるのだろうか。

 

 日常世界サイドの終わりと、魔法使い側の終わり方が凄く対照的。ラストあたりの描写は本気出してるなーと思った。

 

 古き良きファンタジーを読みたい人におすすめ。

『英国一家、日本を食べる』 マイケル・ブース著 寺西のぶこ訳 亜紀書房 2013年

読書

 イギリスのフードライターが日本に来てグルメリポートしてる本。NHKでアニメ化されたりもしてるので、タイトル知ってる人は多いのでは。

 

 

英国一家、日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

英国一家、日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

 

 

 ただその辺の料理屋に行ってるだけじゃなく(それだけでも多分面白いけど)、今はなきビストロスマップの撮影の見学をしに行ったり紹介でしか入れない会員制の銀座の店に行ったり相撲部屋でちゃんこ鍋食べたり色々してる。

 

 訳者解説を見る限りあちらでも多分一般的ではない、家族連れでの取材になっており、さりげなく入ってくる家族たちがいいアクセント。

 

 全部を全部をおいしいといっているわけではなく、日本食をはじめて食べた感想をじかに伝えてくれている。また全体を通して日本に好意的。

 

 「日本食の素人で、食の玄人」というアマゾンレビューが的確。

 

 

『第二音楽室•聖夜』 佐藤多佳子 文藝春秋 2010年(初出は2005~2010)

読書

 小学五年生の秘密基地『第二音楽室』

男女ペア形式の実技テスト『デュエット』

卒業生に贈るリコーダーアンサンブル『FOUR』

いじめられ不登校になった女の子が、インディーズアーティストに焦がれてギターを始める『裸樹』

高校オルガン部生の母との確執『聖夜』

以上所収。

 

第二音楽室 (文春文庫)

第二音楽室 (文春文庫)

 

 

 

聖夜 ― School and Music

聖夜 ― School and Music

 

 

 

あったかく人を見てる人なんだろうなと思う。

長編の『裸樹』と『聖夜』の方が筆が走っててよい。『聖夜』の主人公は、生い立ち的に仕方ないのかも知れないけれど、斜に構えすぎている様に思えてしまい、どちらかというと『裸樹』の方が物語的にも好き。

 

音楽のおかげで私は救われた、という文章って時々見かけるが、リアルタイムだとあんな風になるのかな。

 

 

 

 

佐藤多佳子さんは『しゃべれども しゃべれども』『黄色い目の魚』『一瞬の風になれ』などなど書いてます。どれもいい話。

 

 

 

 

 

 

 

 

『たった一つの冴えたやり方』 ジェイムズ•ティプトリー•Jr 朝倉久志訳 早川書房 1987年(初出は1985~86)

読書

16才の誕生日に両親からもらった小型スペース•クーペで銀河に旅立つ少女を描いた表題作

『たった一つの冴えたやり方』

戦役経験後、宇宙で救難の商売を始めた男はかつての恋人と再会する『グッドナイト•スイートハーツ』

戦争か和平か?スリルある異文化交流『衝突』

以上所収。

 

 

 

表題作、タイトルだけは知ってたんだけど、SFだったんですねー。漠然とミステリ系の様な想像をしていたので、脳にエイリアンが住み着いた描写が始まった時はもうどうなることかと思いました。

 

3つとも読み終わってしまえばちゃんと胸の中に収まりどころがある話でしたが、SFは読書経験が少ないことと、なんでもありみたいなイメージがあるのと、文体のせいで何もかも滅茶苦茶になるんじゃねえかって不穏な雰囲気が読中はずっとありました。

 

『たった一つの』は、まあ話題になるだろうなって感じの良い話。16歳がさしたる混乱もなく、最後の判断を下せるというのはちょっと凄すぎ。

 

『グッドナイト』も最後の主人公の決断が肝な話。全体的に重たい空気だったところに、ぶわっといきなり解放感が来るのは良いですね。

 

『衝突』が個人的に一番好き。船からの通信が来るたびにいやがおうにもましていく緊迫感。けど結局は事態が好転するのを信じて待つしかない感じが良く出てました。

 

しかし覚えやすいタイトルで得してるよねー。巻末の案内見たら、『愛はさだめ、さだめは死』もこの人の著書だそうで、これまた想像の膨らむ格好良さ。ウィキペディアではこっちの方が代表作になってました。次読むSFはこれですかね。

 

 

 

 

 

『はい、泳げません』 高橋秀実 新潮社 2005年

読書

 チェコ好きの日記さんで紹介されており、気になったので読んだ。

 

 

はい、泳げません

はい、泳げません

 

 

 水が怖い怖いと怯える中年男性が、怖い怖い言いながら泳げるようになるノンフィクション。

 

 「できなさ」と付き合うためのハウツー、という切り口の本という先入観で読んでいたのだけれど、個人的にはあんましそういう風には見えなかった。

 

 高橋さんの「できなさ」は一重に水への恐怖に起因していたわけで、嫌々ながらもスイミングスクールに通っていくと彼は泳ぎ自体は上達していく。

 

 彼が後半で「泳ぎたくないけど、泳げちゃう」という水との付き合い方を会得したことからも分かるように、本書から学べるのは「どうしてもやりたくないこと」と付き合うためのハウツーなんではないかと思う。

 

 まあそんなことはさておき無類に面白いのは間違いない。「泳げる人」の只中に一人孤立する「泳げない人」である高橋さん。初心者の頃は訳が分からないままやっていたことが、中級者になってからちょっと理解できるかな?と思った途端、「泳げる人たち」と自分との違いが却って浮き彫りになったり、こういう感じで学習って行われてくんだな、という感じ。途中で日本古式泳法に浮気したりするのも如何にもそれっぽい。

 

 あと実際に身体感覚的に文章にされたときの、スイミングスクールの生徒さんたちの泳ぎに対する感覚の違いもまた面白い。身体との付き合い方はほんとに人によって千差万別なんすね。

 

個人的ツボポイントは、桂コーチがレッスンが進むにつれてコロコロ言うことが変わり、それに高橋さんががんがん翻弄されていくところ。こういうのあるあるだよなあ。