寝楽起楽

ネタばれには配慮しない、感想/紹介ブログです。毎週1回更新 +α を目指したかった。

2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『鈴を産むひばり』『うづまき管だより』 光森祐樹

・鈴を産むひばりが逃げたとねえさんが云ふでもこれでいいよねと云ふ (『鈴を産むひばり』) ・内海と外海のこゑ聴くときにうづまき管は姉妹と思ふ (『うづまき管だより』 この辺は解釈とかいうより「考えるな、感じろ」の世界なんですかね。 鈴を産むひば…

『ちくま日本文学005 幸田文』を読んで思うこと

小中学生のころに読んだ、 雪が降るのを最初に深々と、と表現したのはどこのどいつだろう。 という、とある小説の出だしを私はずっと覚えている(ずっと恩田陸の『ネバーランド』だと思ってたんだけど、確認したら違った。あさのあつこの『バッテリー』とか…

母国語に潜む嘘:『ことばと国家』 田中克彦著 岩波新書 1981年

私はここに報じられたゲンダーヌさんの行動はもちろんのこと、また、それを支持して、ひろく世に知らせるために記事にした、この文章の書き手にも共感する。(…)それだけに、「ゲンダーヌさんの母国語」にはめまいを感じるほどの当惑をおぼえたのである。 …

ハンター必携:『クマにあったらどうするか:アイヌ民族最後の狩人』 語り手・姉崎等 聞き書き・片山龍峯 ちくま文庫 2014年

CAPCOMが送る大人気ゲームシリーズ、『モンスターハンター』の最新作が発売されて一か月弱が経ちました。皆さん、充実した狩り暮らしを送っていますでしょうか? ゲーム脳が取り沙汰されたのは一昔前のことですが、中にはコントローラーを握りながら、「自分…

エンジョイ勢からガチ勢まで:『マヤ・アステカ不可思議大全』 芝崎みゆき 草思社 2010年 

突然ですが皆さんは、歴史が好きでしょうか? 「受験の時にやったきりで、もう全く覚えていない」 「小ネタは楽しかったけど、人名やら年号やら覚えるのは苦手だった」 おそらくはこうした人が大半で、大人になってから改めて本格的に勉強しようと思っても、…

詩人の感性:『短歌ください』 穂村弘 角川文庫 2014年

穂村弘はまず、純粋な読者として、びっくりさせられたいんだと願っている。と、同時に、どんなに意外な作品でも、そのよさを自分はキャッチすることが出来るという自信と自負があるのだろう。そうでなかったら、毎回毎回「意外な作品」なんていい続けられな…

絶対の三原則:『わたしはロボット』 アイザック・アシモフ 伊藤哲訳 創元SF文庫 1976年

ロボット工学の三原則 一、ロボットは人間に危害を加えてはならない。また何も手を下さずに人間が危害を受けるのを阻止してはならない。 二、ロボットは人間の命令に従わなくてはならない。ただし第一原則に反する命令はその限りではない。 三、ロボットは自…

現場にいる私から/短歌

短歌と四人称についてのこの記事を興味深く読んだ。 たくさんあるわたし、というテーマを見たときいつも思い出すのは、漫画『ムーたち』のファースト自分、セカンド自分、サード自分・・・の概念。 (ムーたち 2巻から スキャン適当でごめんなさい) 同じ時間…

発露する風鈴たち:『ひだりききの機械』 吉岡太朗著 短歌研究社 2014年

両手とも左手なのでひだりがわに立たないとあなたと手をつなげない 利き腕がある機械、ていう発想。しかも両手ともひだり。不器用そう。 ひだりききの機械―歌集 作者: 吉岡太朗 出版社/メーカー: 短歌研究社 発売日: 2014/04 メディア: 単行本 この商品を含…

探し物はなんですか:『青い鳥』 メーテルリンク 堀口大學訳 新潮文庫 1960年(原著1908年)

ふとりかえった幸福 わたしは「幸福」のなかでも一番ふとった「お金持ちである幸福」です。わたしはきょうだいたちを代表して、あなたとあなたの御家族を、わたしたちの終わりのない饗宴にご招待しようと思ってまいりました。あなたはこの世で本当の、「ふと…

150記事突破した記念に未公開の文章を晒す

昨日の縄文ZINEの紹介で本ブログの記事数がめでたく150記事となりました。 中学~高校にかけて3つ4つブログを作っていた記憶がありますが、いずれも数記事更新しただけでやめてしまっていたので、この数は自分にとってはちょっとした記録と言って良い。150も…

震わせろ縄文魂:『縄文ZINE 土』 縄文ZINE編集部 2018年

新しいことばかりが発見じゃない。自分にとって勇気が湧くような古い映画だって、年の離れたお兄ちゃんが教えてくれた80年代のUKロックだって、もちろんもっともっと古い時代、歴史や縄文時代のことも誰かの大切な発見となることだってあるだろう。 レコード…

自己啓発じゃ終わらない:『アルケミスト 夢を旅した少年』 パウロ・コエーリョ著 山川紘也・山川亜希子訳 角川文庫 2004年(原著1988年)

「おまえさんはわしにとって、本当に恵みだった。今まで見えなかったものが、今はわかるようになった。恵みを無視すると、それが災いになるということだ。わしは人生にこれ以上、何も望んでいない。しかし、おまえはわしに、今まで知らなかった富と世界を見…

伝承の創造:『貴婦人ゴディヴァ:語り継がれる伝説』 ダニエル・ドナヒュー著 慶應義塾大学出版会 2011年

どんな人でも貴婦人ゴディバについては耳にしたことがあるだろう。ほとんどの人にとって、彼女の名前を聞いて思い浮かべるイメージは、馬に乗った裸の女性である。数は少ないが、ゴディバの馬乗りの話と聞いて、「ああ、こういう話でしょ」といえる人たちも…