寝楽起楽

ネタばれには配慮しない、感想/紹介ブログです。毎週1回更新 +α を目指したかった。

読書ー評論・学術

自立した個のなせる技:『他者の靴を履く アナ―キック・エンパシーのすすめ』 ブレイディみかこ 文藝春秋

わたしの息子が英国のブライトン&ホーヴ市にある公立中学校に通い始めた頃のことだ。 英国の中学校には「シティズンシップ教育」というカリキュラムがある。息子の学校では「ライフ・スキルズ」という授業の中にそれが組み込まれていて、議会政治についての…

いるためにあるコミュニティ:『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』 東畑 開人 医学書院 2019年

これ(※通過型デイケア)に対して、居場所型デイケアでは、必ずしも「通過」が前提とされない。実際、多くのメンバーさんがデイケアを通して社会復帰していくのではなく、デイケアに留まり続ける。だから、居場所型デイケアはときに、「終の棲家系デイケア」…

聴く・する・語る:『音楽の聴き方』 岡田暁生著 中公新書 2009年

音楽は決してそれ自体で存在しているわけではなく、常に特定の歴史/社会から生み出され、そして特定の歴史/社会の中で聴かれる。どんなに自由に音楽を聴いているつもりでも、私たちは必ず何らかの文化文脈によって規定された聴き方をしている。そして「あ…

消えていった人達:『旅芸人のいた風景 遍歴・流浪・渡世』 沖浦和光著 河出文庫 2016年(単行本2007年)

その頃の日常風景の記憶は、薄墨で描いた水墨画のように輪郭がぼやけているが、今でも瞼に焼き付いているのは、西国街道を旅していた遊行者や旅芸人の姿である。 西国三十三箇所めぐりの「巡礼」をはじめ、「虚無僧」「六部」「山伏」などの旅姿をよく見かけ…

三者三様:『読んじゃいなよ!』 高橋源一郎編 岩波新書 2016年

わたしが大学に入ったのは一九六九年。卒業、ではなく、除籍になったのが一九七七年。その八年の間に、わたしは、数えるほどしか授業に出ませんでした(十回も行ってません)。 なので、ひょんなことから、大学で教えるようになったとき、というか、学生たち…

母国語に潜む嘘:『ことばと国家』 田中克彦著 岩波新書 1981年

私はここに報じられたゲンダーヌさんの行動はもちろんのこと、また、それを支持して、ひろく世に知らせるために記事にした、この文章の書き手にも共感する。(…)それだけに、「ゲンダーヌさんの母国語」にはめまいを感じるほどの当惑をおぼえたのである。 …

伝承の創造:『貴婦人ゴディヴァ:語り継がれる伝説』 ダニエル・ドナヒュー著 慶應義塾大学出版会 2011年

どんな人でも貴婦人ゴディバについては耳にしたことがあるだろう。ほとんどの人にとって、彼女の名前を聞いて思い浮かべるイメージは、馬に乗った裸の女性である。数は少ないが、ゴディバの馬乗りの話と聞いて、「ああ、こういう話でしょ」といえる人たちも…

現在形の過去を生きる:『記憶/物語』 岡真理 岩波書店 2002年

物量にものを言わす米軍に対し、弾薬も底をついた日本兵は、敵軍を驚かすために英語で叫び声を上げながら突撃した。元大尉は語る。突撃してきた日本兵たちのひとりがこう叫んだのだという。 「ヘル・ウィズ・ベイブ・ルース!」(Hell with Babe Ruth「ベイ…

たわだ語の思想:『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』 多和田葉子著 岩波現代文庫 2012年

人間だけではなくて、言語にもからだがある、と言う時、わたしは一番、興奮を覚える。日本語にも、たとえば、文章のからだ、「文体」という言葉がある。文章はある意味を伝達するだけではなく、からだがあり、からだには、体温や姿勢や病気や癖や個性がある…

発掘された新概念:『中動態の世界 意思と責任の考古学』 國分功一郎 医学書院 2017年

私は毎日さまざまなことをしている。たえず何ごとかをなしている。 だが、私が何ごとかをなすとはいったいどういうことだろうか?どんな場合に、「私が何ごとかをなす」と言えるのだろうか? たとえば、私が「何ごとかをさせられている」のではなく、「何ご…

主役になりたい僕らのマニュアル:『人間・この劇的なるもの』 福田恆存 新潮文庫 1960年

自己が他人を、いや自分自身をも、明確に見るための演戯と、私はいった。が、見るというのは、たんなる認識でも観察でもなく、見たものを同時に味わうということにほかならぬ。すでに劇の進行について語ったように、意識は先走りしてはならぬのだ。役者は劇…

真木祐介『気流の鳴る音 交響するコミューン』 ちくま学芸文庫 2003

気流の鳴る音―交響するコミューン (ちくま学芸文庫) 作者: 真木悠介 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2003/03 メディア: 文庫 購入: 6人 クリック: 41回 この商品を含むブログ (44件) を見る 本名見田宗介。若くして東大の助教授になった後のメキシコ留学…

福岡伸一『世界は分けてもわからない』 講談社 2009年

世界は分けてもわからない (講談社現代新書) 作者: 福岡伸一 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2009/07/17 メディア: 新書 購入: 27人 クリック: 225回 この商品を含むブログ (155件) を見る 『生物と無生物のあいだ』で一躍有名になった先生が、その続編の…

鷲田清一『新編 普通をだれも教えてくれない』 筑摩書房 2010年

久々に読書日記。 別に、更新していない期間中本を読んでいないわけでは無かったのだが、 なんとなく書くのが面倒で放っておいているうちに、読んだけども記事にしていない本が溜まってきて、更に億劫になり・・・というスパイラルに陥りそうになったので、 …

橋本治『上司は思いつきでものを言う』 集英社 2004年

こんな時間(午前4時)にブログを更新している。 うまいこと眠れない時に、枕元の本にうっかり手を出したりすると、これが度はまりして、ついつい読んでしまい、頭も深夜のためにハイになっていき、何がなんだかわからないけど面白れー、という状態になって…

養老孟司 『いちばん大事なこと』 2003年

ブックオフ105円勢。読むもんに偏りが出て来た。 いちばん大事なこと―養老教授の環境論 (集英社新書) 作者: 養老孟司 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2003/11/14 メディア: 新書 購入: 1人 クリック: 15回 この商品を含むブログ (47件) を見る 自然は、…

内田樹 『日本辺境論』 2009年

BOOKOFFで衝動買い第一弾。 八冊で840円とか、やっす。 日本辺境論 (新潮新書) 作者: 内田樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/11 メディア: 新書 購入: 29人 クリック: 793回 この商品を含むブログ (356件) を見る 内容は、丸山眞男先生等の日本人論の…

養老猛司&茂木健一郎『スルメを見てイカがわかるか!』2003年

お二人の対談をまとめたもの。 スルメを見てイカがわかるか! (角川oneテーマ21) 作者: 養老孟司,茂木健一郎 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店 発売日: 2014/06/10 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 面白かった話 ○情報は止まっているが…