「なにやってるの」わたしはいった。
「 『ダイヤモンド・ナイツ』のパスワードがないかなと思って」トードは慌てて答えた。
「おまえ、ソリーのキャラのアイテムを全部自分のキャラに移すつもりだっただろう」デッカーが言った。「最低な奴だな。葬式に来てるんだぞ」
「たしかに俺は最低だ。みんな知ってる。でもパスワードは見つけてない。かわりにみつけたのがこれ。デスクトップにあったんだ。見てよ」
わたしたちはコンピュータの前に集まって画面を見た。
『ラザロのゲーム』
ソレン・カープ作
きみたちは悲しんでいる
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「あいつ、ゲーム作ってたのか?あいつがゲームつくってるって、誰か知ってたか?」
(本著「1アップ」p 80-81)
ゲームの出だしって無条件にわくわくするよね。
スタートボタンを押してください ゲームSF傑作選 (創元SF文庫)
- 作者: ケン・リュウ,桜坂洋,アンディ・ウィアー,デヴィッド・バー・カートリー,ホリー・ブラック,チャールズ・ユウ,チャーリー・ジェーン・アンダース,ダニエル・H・ウィルソン,ミッキー・ニールソン,ショーナン・マグワイア,ヒュー・ハウイー,コリイ・ドクトロウ,アーネスト・クライン
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2018/03/12
- メディア: Kindle版
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○内容
ピース又吉が絶賛、SF賞3冠の『紙の動物園』のケン・リュウ、ハリウッド映画化とかまでしてた『ALL You Need is Kill』の桜坂洋、一人火星に取り残されて絶望するかと思いきや生活をエンジョイしはじめる『火星の人』のアンディ・ウィアー等々の豪華執筆陣がゲームを題材にSFを12編書いた。
○感想・考察
ゲームを使って何かをする、ゲームが現実化する、そもそも現実がゲーム的である、という発想の方向性自体は予想外なものは無かったけど、料理の仕方がそれぞれ独特で楽しかった。
いつもよりさくっと世界に入りやすかったのが驚き。ゲームってある程度のお約束事が存在するもんで、それを了解してるかしてないかで効率が著しく変わったりするけれども、小説の媒体におとしこんでも、そのゲームの暗黙のルールが殺されずに息づいているというらしい。
途中からは小説読んでるというよりゲームやってる気分になってた。なので、本なんか読まねーよヘッドショット決めてるほうが楽しいだろ、とかって人にもお勧め。
実際テキストアドベンチャーなんてジャンルがあるし、ゲームと小説って相性いいんでしょうね。
「救助よろ」「1アップ!」「猫の王権」「キャラクター選択」「時計仕掛けの兵隊」の5編が特に好き。
原著は元々26編あって、そこから12編を選んで今回収録したとのことなので、多分売れ行きよければ『Ⅱ』が出るから、読みたいので皆さん買ってくれ。
後ついでにゲームSFだと
こちらもお勧めしておく。2115年の視点からそれ以前に出た架空のゲームを貶して褒めて愛を語るという、面白いコンセプトです。
カクヨムにweb版があるのでまずそちらでチラ見してもいいかもしんない、というか自分もまだ書籍版買ってない。『紙の動物園』も積ん読だし『火星の人』も未購入だし。読むほどに読むべき本が増えていくというスパイラルに最近陥りつつある。
この沼、金がかかるんだよなあ。
以上。