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アーシュラ•K.ル=グウィン『影との戦い ゲド戦記1』 清水真砂子訳 岩波少年文庫 2009年(原著1968年)

 

影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)

影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)

 

 何故か読みさしで放置していたのを読了。

好物がこれでもかと出されて、お腹一杯になる作品だった。

なんの説明もなしに地名が挿入されたり、呪文の名前が出てきたり、精霊っていう単語が出たり竜が出てきたり色々するんだけど、どれ一つとっても世界観と破綻しているところがなくて、凄く安心して読んでいけた。

 

一応あらすじ。

アースシーという島々が寄り集まった世界。ゲドはその中のゴント島、十本ハンノキの村という片田舎に生まれる。彼はふとしたきっかけで自らに魔法の才能があることを知り、師匠にも恵まれ、順風満帆の中で更に魔法を深く学ぶために学院に入学する。魔法の神秘を次々と習得していくなか、彼はライバルであるヒスイの挑発に乗ってしまったがために、禁忌である死霊を呼び出す魔法を唱え、それが原因で自らの<影>を呼び出してしまうことになる。ゲドと<影>との、孤独な戦いが始まった。

 

ファンタジーには魔法を『技術』として描く人と『神秘』として描く人と両方ある気がするけれども、本作はそれを未分化の、生活に深く根を下ろされたものとして作っている。

魔法や冒険は、どちらも身近にあるものとは言いがたく、だからそれを扱う小説はしばしば荒唐無稽になりがちなんだけれども、あくまでアースシーという世界の中での、ゲドという魔法使いの生活を、ありのまま等身大に描こうとしている。そこに不自然さがないのでほんと良い。

 

ただ、いわゆる「冒険ファンタジー」みたいなものをイメージして読もうとすると多分肩透かしを食らうと思う。そういう話ではないです。

イメージとしては、前紹介した『魔法使いの弟子』なみの地味さだし、あれは明るい作品だけどこれはむしろ暗い、というか多分そういう部分を意識している作品では全くない。詳しいことは読んでみれば分かるけど、とにかく大事にされているのはリアル感だと思われる。

 

第一巻にしてゲドが成長しきってしまった感があるので、この後どう展開していくのかが結構気になるところ。今までなんとなく見聞きしてきた感じでも、この『影との戦い』は話題になることは多いけど、第二巻以降の話ってあんまり皆してなくない?

 

ということで。二巻以降も今度読みます。