今回は漫画。
○あらすじ
酷暑の夏、少女はマラソンの途中で意識を失い、その最中に村を幻視する。
現実とは異なり雨が降り続くそこに暮らすのは、老人と少年。彼らは一体何者か。村は一体どこなのか。
○考察・感想
漆原さんは『蟲師』の人で、つまりはこの『水域』も読む前から神作品であることは明らかであり、めっちゃ安心して楽しんだ。実際良かった。
意識が「落ちる」とか「沈む」とかいう表現があるように、水と心の深層というのは確かに相性が良くて、そこまでは発想としてはあるけど、じゃあその水の向こう側には何があるの?というところを考えた作品。発想花丸。
少女千波があちら側に行ったのを皮切りにして、せきとめられていた村の記憶が関係者からあふれ出てくる。ダムに沈むのを防げなかった故郷、其処に今も埋もれる行方不明の少年、それら自体はとっても苦いもの。でも、水自体はたそこに悠然としてあるだけ、というような一種のつきぬけが終盤一気に示され(と僕は感じた)、そこに蟲師味を感じた。
表紙だけ見るとなんだか『ぼくらの』とかあっち系の雰囲気で、ちょっと嫌な話なんじゃないの?と敬遠されちゃうかもだけど、実際は全然そんなことないですよ。
もうすぐ夏だし。もう暑いし。空想の雨に打たれてしんみりしませんか。