友人が薦めてたので観て来ました。良かったよ。
○あらすじ
突如飛来した宇宙人、その目的を探るために言語学者が頑張る
※ネタバレには配慮せずにいくので、今後見に行く可能性があるなら覚悟して読んでください。
人類vs宇宙人の骨肉の争い、みたいな話では全くないです。そういうのを求めてる人は別のをどうぞ。
この音楽↓聞いて、なんかすげえ、てなるタイプなら映画館へGO。もうすぐ上映終了です。
○考察・感想
凄く丹念に工夫が施されてる映画。
一番目立った特長は画面内のあちこちに焦点を合わせていくカメラの手法かな。
視聴している側がついていくのはやや大変だけど、同時的に世界を見るようになった、という設定を上手く表現してたと思う。
以下、映画を見て出てきた疑問点と、ぐぐってへえって思ったことをつらつら書いて来ます。
・イアン(物理学者)がルイーズ(言語学者)のようにはなれないことが示唆される描写
ルイーズはヘプタポッドとの交流そのものに強い関心を示す。
人間とヘプタポッドとを隔てるガラスに真っ先に触れるのはルイーズだし、素顔をさらすのも彼女が一番最初。
言語学者だから、という以上に、宇宙人のクリティカルな部分に辿り着けたのはそういう理由でしょう。
一方イアンのほうですが、一番最初に宇宙船に乗り込んでいくシーンで、彼はその外形に手を触れて笑みを浮かべてるんですね。
宇宙人と出会うこと、その他諸々に恐怖を覚えているルイーズとは対照的です。
彼が理解出来るのは宇宙人の持つテクノロジーであり、交流そのものはルイーズの手を借りなければ出来ない、そのことが明示されているかと思います。
ガラスで隔てられている、というのは最後のルイーズがシャン上将に電話をかけるシーンでも効果的に使われてた。
無菌室に最終的に立てこもるのはルイーズとイアンの二人。イアンはルイーズが何をしているかは分からないけど、彼女の言うとおりにとりあえず動く。その後の二人の関係性を象徴するシーン。
・C4爆破事件の必要性
あのC4での爆破の後、明らかにルイーズの同時認識能力が向上していること、またその後招き入れられた空間にはガラスが無かった(よね?あれ、ちょっと自信なくなってきた)ことを考えると、あの爆弾はルイーズとヘプタポッドたちとの隔たりを物理的に(と同時に精神的に)ぶっ壊す役割があった。
あの爆弾のせいでアボットは「死の過程」にいくことになるわけだが、これが「死にかけている」とかではなかったことに注意。
まず前提として、ヘプタポッドたちは時間の概念がない。
ということは、生や死も、我々の思っているそれとは遥かに異なる風に捉えていると考えられる。
ヘプタポッドたちにとっては、生や死は全く重要ではないのかもしれない。ルイーズの最後の選択が、またそうであったことが思い起こされる。
「あんな爆弾一つで高度な技術を持つ宇宙人が死ぬなよ」という茶々入れを見かけたが、これには上記が回答の一個になりえるのではないかと思う。
・最後の中国語、なんで字幕がなかった?/ポスターに隠されたメッセージとは
日本版ポスターのみの遊びとして、このメッセージ、のセ部分のみフォントが明朝体となっていることが一時話題になっていた。
気づいた人やべえ、と誰しもが思うだろうが、これはつまり、人によって見えるものが異なる、ということを端的に表している事象であり、それはそのまま映画のテーマにも繋がってくる話だと思う。
中国語に字幕がなかったのも同じ理由。分かる人にだけ分かるようにあえて作っているのだろう。
ただあそこがやや不満なのは、それまではずっとルイーズの視点に寄り添って視聴できるのに、あそこで突然自分ら中国語分からん人は突き放されちゃうこと。
言語認知の描写については、突き詰めるともうちょい面白いことが出来そうだったかもなあ、という気がしなくも。
本編は英語で進んでたけど、あえてずぅっとロシア語やら日本語やら垂れ流すシーンを造りまくって、終盤だけそれらにもちゃんと字幕が表示されるようになる、とか。
・何でメッセージにタイトル変更しちゃったの?
これはなあ、中々難しいよなあ。
arrivalって、到着って意味しか知らなかったんだけど、視聴後に調べたら口語で「新生児」ともいえるそうでうわーーーーーーーという感じ。
日本語では到着と新生児同時に言い表せる単語ないからなあ。
そりゃ到着のほうから連想してメッセージにするしかなかったかも。でもこの辺も言語認知ですよね。おもしろ。
こんなとこですかね。
しかし音楽が素晴らしかったな~~冒頭に出した「Heptapod B」マジ好き。
あと文字な。綺麗だったな。
以上です。