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言語動物水族館内臓爆発:『小笠原鳥類詩集』 小笠原鳥類 現代詩文庫 2016年

 暗い人形のガラスの棚は、のように数年間放置され、コンクリートも生きた魚礁・魚醤、腐敗水族館、あえかなくさっていておかしい、やわらかくくる緑色の寒天ゼリーみずうみ、湖・完全水槽、紫色の湖・水槽全集緑色の怪物という。ブロッコリーが浮かぶ、海底から沼になっていて、中で、脚を持ち上げて廊下を私たちは歩く。持ち上げられる、置かれた肉食金属のテリーヌ。冷たい、ゼリー寄せ、冷えたオードブルである、やわらかい、ひっひの野菜も置かれた、食器の磁器が。液状粉末がにくい炉にひっひ、わたしはやわらかくくるという、皮膚付着も害はないが緑色の逃げた。

(「腐敗水族館」、本書p11から

 

 どうしたらいいものか。

 

小笠原鳥類詩集 (現代詩文庫)

小笠原鳥類詩集 (現代詩文庫)

 

 

○内容

 言語の実験場的な現代詩の中でさえもやべえ(凄い)やつ扱いされてるっぽい人の詩集。

 

○感想

 まだ読み終わってないんですが、多分読みおえた後も感想は変わらず困惑するばかりだと思うのでもう記事書きます。

 

 そもそもこの詩集を全部ちゃんと読める人ってどのくらいいるのか。

ただ字面を追ってるだけだと、完全にキャパオーバーで何も入ってこなくなっちゃうし。

こんなに何読んでるのか分からない本ははじめてです。

 

 というわけで最初の数編は数回だけ、残りは目を通したり通してなかったりの状態なんですが、解説者さんたちが「天も地もない」とか、「主体が崩れ去っていく」とかいう感じはなんとなく分かる。

 

 冒頭で引用した一部分を読んで頂けたらわかると思うんですが、言葉のリズムそのものは非常によく流れる。声に出して読むと気持ちいいくらいに。その中であげられていくイメージは雑多かつ具体性に富みすぎるゆえによくわかんないんだけど、少なくとも何がしかの雰囲気は伝わってくる。

 

 そんでまた、そのイメージに対して「私たち」「わたし」は全く優位にはおらず、並列するものとして登場している。僕はまだ鳥類さんの詩の雰囲気を感じ取る、というところまでしか降りられてないけど、多分こっから進んでいくと詩の一部として・あるいは全部として自分がある、みたいな風になってく、ってことなんじゃねーかなという推測。

 

 難しいのは、書いてる小笠原鳥類さんは僕ではないということで、彼が興味を抱いているようには僕は動物や水族館や内臓に対して気持ちはない。

しかもそのイメージは頻繁に入れ替わる。

だもんで、全体的には、鳥類さんの宇宙を外から眺めつつ、時々手つっこんですぐ引っ込める、みたいな読み方しか今んところできてない。

 

 ただそれだとやはりもったいない気がする。

 

 ということで、例によって例のごとくネットを漁ってみると、鳥類さんの詩を使って読書会を開きました!っていうチャンレンジャーな方が居まして、果たしてそこでいったい何が話されたのか大変に気になるんだけれども、ちょっと一人読書会みたいなもんを勝手ながら今からこの記事でやりたいと思います。

ここまでで読むのやめてくれてもいいです。ありがとうございました。

 

 

敵が増大している(一般論です

自分にとって嫌なものは、自分の中で

ふくらむ(犬の卵(犬の卵(犬が

嫌いなので、それについて語ろうと

思っているのですが、犬が好きな人が

「残念ながら」多いので、個と普遍の

バランスがとれたところでしか、私で

ありながら他人でもあるというふわふわの

木星生物は生まれない(ああ。ああ

ふわふわの木星犬。大嫌いだ。犬の背びれ

 

 犬が好きな人がもう少し少ないと個と普遍のバランスが取れて「木星生物」が生まれてくれるんだけど、犬好きが多すぎるせいでバランスが崩れてて背びれをもった「木星犬」という敵の卵が自分の中でふくらみ、生まれ、それは個人的な問題であるようでいて、皆の敵も同じように増大している、らしい。

木星」に対して凄い思い入れがある、という人以外は、「私でもありながら他人でもある」という距離感に対して何となく「木星」を当てるとしっくり来るんじゃないか(来ないか?)

 

 

 繁殖期になると、石の平らな表面を

きれいに掃除し、その上に粘着卵を

その卵巣(毒がある(これは驚いた。

実は毒の塊だったのですか(読者にとって

できるだけふくらむやわらかい敵であるなら

その時に私は、私のままで増殖する

(乱暴に、犬を踏んだら泥だった)

 

 多分前半は木星犬の生態?みたいなこと?でも木星犬は「わたし」にとっての敵であったはずなのに、いつの間にか読者にとっての敵にすりかわっている。

「私のままで増殖する」のは、敵が自分の中でふくらむせいで、自分が拡張されていっているから?

犬を踏んだら泥だったのは、泥を犬と間違えるくらいに自分にとっての敵の範囲が広がっちゃった?

 

あら?コップの中にあったはずの粘液は?

マウスブリーダーの一種で、こまかい

砂を口に含んできて、卵の上にかける

のです(犬のしろひれたびら。しろひれ

 

 理解不能で変な笑いが出てくる。

 マウスブリーダーていうのは、調べたところ親の口の中で卵を保護する魚たちのことをいうらしい。

身体の中の敵、からの連想なのか。コップは飲むものなんで、何の粘液か知らんけど飲んだの?

 

書かれているものについてだけ語る

ということによって永遠に閉ざされる

だけか?という問いがあって、例えば

犬なのだ、これは。と言っても何が

放出され?粘液に包まれ、その外に

しみ出るものと、しみ出ないものが

あるか(いくつかの穴によって外と

つながり(卵(産卵によって循環との

結合が(増殖による複製は、だが理想

だろうか、それも(問いは続くだろう

 

 突然どうした、という気もするけれども。

 外/内、開く/閉じる、で二項対立的なものがぼんやりある、、ぷらす「犬の」卵として最初は悪いイメージとして用いられてたのが、今度は循環、ていう新しい二項対立ともまた異なる属性が付与された卵があるように見える。

(が連続するのはふくらむイメージが分かって好き。

 

「聞いてください、わたしたちは

あなたたちにとっては敵です。わたしたちの

銃はあなたたちを骨にするでしょう」

人間の首は犬の体につなげられ、とか

そんな映画もあった(問いは続くだろう

敵意以外に、神がいるかについてなどの。

 

 最初の台詞は犬がいってんのか人間がいってんのかわからんが、聞いてください、て言ってきてるから、少なくとも両者の中で対話は可能なもんとしてみなされてる。

この詩に限らんのだけれど、こういうイメージ同士の交感(交換)性みたいなとこは鳥類さんの特徴のように思う。

 

ここにあるものはいつでも、開かれる

ための問い、同時に、閉ざされている

問い?それ以上でも、以下でも

「私は、私のままで増殖していく」

 

 開く/閉じるという二項もここでは対立ではなく並列で書かれる。

 開くと同時に閉じる、というのも確かに鳥類さんの詩っぽくて、すげえたくさんのイメージがあるようでいて、実はおなじところをぐるぐる回されてるような気もするんだよな。

 

粘液とともに現れます。魚ではないの

ですが、鋭い。すでに宇宙船の中は、

大混乱の、お祭り(踊り(敵が増大している

食い破るでしょう、内側から、あなたを

どのような敵か?(敵が増大している

「伝えたい、できるだけリアルなままで」

食い破るでしょうか、内側から、(敵が

増大している(敵が増大していますか

 

 詩はここまで。

 宇宙船は多分最初の木星生物、木星犬が乗ってるところだと思うんだけれども、普遍が増大しているせいでお祭り状態?

同時に内側からの敵も増大しているが、敵が大きくなり、私も大きくなり、敵が内側から食い破って出てくることで、今度は敵と私、という区別もなくなる。から、最後は投げかけで終わってる?ってことでいいのか?

 

 この「犬」っていうのは一番最初に鳥類さんが書いたっぽいやつで、だから割と意識的に書かれてて、恐らく初心者向け。解釈っぽいことできたし。

 

 ただこうやって一つだけ抽出して取り上げるのは意味なくて、これは詩集全体の雰囲気を楽しむものという気もしている。

でもそれを上手く伝える言葉が思いつかねえんだよなあ。

鳥類さんを一個のビデオテープだとした時に、あまりにも重ねて録画してるせいで一個一個の原型を留めてないその映像を、倍速したり一時停止したりしながら見せられてる感じ?

 

 

いずれレベルが上がったら再ちゃれしたい。

 

以上。